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カテゴリ:音楽
01.Berlin 02.Lady Day 03.Man of Good Fortune 04.Caroline Says I 05.How Do You Think It Feels 06.Oh Jim 07.Caroline Says II 08.Kids 09.Bed 10.Sad Song ■珍しく4日続けてレコード・レビュー。出し惜しみというか、好きなものについて、あまり連続して書き続けることは熱いね、とか本当に好きなのね、とか言われちゃう感じで、あまり好まないのだが、なんかもう吐き出したくてしょうがない気分でもあるのだ。別に残り少ないとか、終わりが近づいているというわけではないが、周辺ばかりなぞっているとそのうち中心に触れてなかったことにずいぶんと後悔することにもなりかねない。余裕がなくなってきたのかな、最近。 ■ルー・リードの「ベルリン」。世界で一番悲しいアルバム。または、世界で一番文学に近いアルバム。ベルベット・アンダーグラウンドからソロに転向して3作目になるのかな。70年代始め、やはり多感な頃に聴いたこの作品にはずいぶんと強烈な印象がある。 ■LPにはかなりちゃんとしたリーフレットが付いていて、このアルバムの物語を視覚的に再構成させてくれる。印象的なフォントによる歌詞、そしてアートワーク。どのシーンにも鮮やかな血の色が一カ所だけ配置されており、死の匂いが全編色濃く反映されている。 ■アルコールとタバコの煙がたなびく、とある酒場の喧噪を想像させるM1からこの物語は始まる。彼女は5フィート10インチ。It was very nice。M4、彼女はとても冷たい。まるでアラスカのようだ。そんなキャロラインの話をはさんでまるで映画のように物語は進む。映画といえば「キャバレー」、ライザ・ミネリのあの映画を思い出す。あれもベルリン、ナチズムが台頭していた頃の話だ。あの映画のジョエル・グレイの素晴らしかったこと。 ■プロデュースはボブ・エズリン。アリス・クーパーの諸作やこの後、ピーター・ガブリエルのデビューアルバムなどを手がける人だ。M1などはデビューアルバムに入っていた曲、それをヒントに大脚色大会。オーバープロデュースという批評を良く目にするが、この人の力無くして、これだけの名作は生まれなかったように思う。 ■B面にあたるM7からM10までの悲しさはなんだ。ルー・リードのボーカルは劇的なまでに歌わない。バックの弦の音やベースのうなりが薄暗がりの世界を見事に脚色している。(ジャック・ブルースですよ、あのクリームの)M8後半の赤ん坊の泣き声はちょっと身体に毒。うなされる。もしもM9でこのアルバムが幕を閉じていたら、これほど救いのない作品もなかっただろう。I said oh, oh, oh, oh, oh, oh,oh,what a feeling. ■75年の中野サンプラザでの初来日公演に行った。たしか、5曲目が「ヘロイン」で客席からひとりの男性がスクッと立ち上がり、ステージの彼と正対したことを覚えている。すぐ警備員が連れて行ったけど、ルー・リードはなんのリアクションもなく淡々と歌い続けていた。このアルバムが出てすぐのコンサートだったにもかかわらず、ここからはM5しかやらなかった。いや、できなかったのかもしれないな。この作品はこのアルバムの中で全て完結してしまっているのだから。1曲だけ抜き出したとしてもそれは「ベルリンのかけら」に他ならないんだよ、きっと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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