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テーマ:おすすめ映画(4019)
カテゴリ:映画
■自転車の2人乗りというと、学生時代はやっていたのは、後輪の真ん中あたりに足をかけて直立して運転者の肩につかまる乗り方で、これは割合バランスがとりやすく、運転している方も比較的楽にこいでいくことができた。
■しかし、後ろにベタッと座られるとそれが体重の重い女子なんかだとしたら、バランスがとりにくく、やたら力が必要でグラグラしながら腰を浮かせて運転していた。 ■キッズリターンといえば自転車の2人乗りなんだが、冒頭、授業中の校庭を後ろ向きでペダルを踏む安藤政信と前が見えないままハンドルを操作する金子賢の曲乗りはやっぱり何度見ても絵的にかっこいいワンシーンだ。 ■その頃教室で行われている授業は森本レオが教える世界史で、受験対策かなんかで、むずかしい問題は後回し、解る問題から解いていけ、なんていう実践的なテクニックを教えているわけだ。 ■そしてふたりが通うことになる町のボクシングジムではちょっとやさぐれた先輩がいて、コーナーに追いつめた相手に肘うちを撃ったり、相手の足先を踏んでカウンターを狙うというような裏技を伝授してくれる。 ■そんなふたつのシーンがやけに繋がって見えたのはそのどちらにも正々堂々としていないもの、純粋とは言えないものが含まれていて、できればそれをしないで済ませたいんだけど、実際にはやらざるをえない様々なものが自分たちの周りには溢れているんだということだ。 ■ヤクザの親分になる夢、ボクシングのタイトルホルダーになる夢、すんでの所でそれらは成し遂げられずに彼らは等しくダメージを受ける。それは喫茶店で看板娘を口説いた青年にも同じことが言えた。この物語がニクイのはそこに至るまでの助走状態で、スムーズに彼らがそれに向かって走っている様子が描けているところで、それゆえ壁に跳ね飛ばされた時の落差が大きく見えてしまうところにある。 ■その中で唯一成功したのが掃除用具の箒をマイク代わりにして、漫才の練習に明け暮れていた二人組だったというオチも可笑しい。安藤君と金子君がふたりの場所を奪ってかけ合いをするシーンもなかなか良かった。ひょっとしたら彼らはそっちの道に進んだ方が良かったのかもしれない。 ■北野組脇役総出演の中で圧倒的に存在感を示したのがジムの先輩役モロ師岡。彼が安藤君に教えたのは「強いやつは強い」「弱いやつは弱い」という否定のしようがない結果論で、人が人をダメにする過程というものを鮮やかに描いた。ただ安藤君はこの人に対して何の恨みも憎しみも持たなかったのではないか。私たちの周りには実はこういう人がたくさんいるのではないか。 ■久石譲の傑作スコアと共にラストもまた自転車の2人乗りのシーンで終わる。最後のふたりのセリフはまるでアルチュールランボーの詩のように永遠である。「オレたち終わっちゃったのかな」「まだ始まってもいねぇよ」ダメージを受けたふたりはまた校庭に戻ってきたのだ。それがつまり Kids Return ということなんだ。 PS ■金子賢の勘違いはこの映画が発端だったのだろうか。そういえば、彼にカツアゲされる高校生役で宮藤官九郎発見。いつかきっと虎視眈々と仕返しの機会を狙っていると思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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