えー、本日は1日中雨でした。したがって、という訳じゃないんですが、ライカを持参していたにもかかわらず、1枚も切りませんでした。ふむ。
さて、ルードヴィッヒ・ベルテレ博士が雪渓した「ゾナー」型レンズについての考察です。
1924年にベルテレ博士は、当時としては超すんごい大口径レンズである「エルノスター」100ミリF2.0を設計しました。フィルム感度が低い時代に、「目で見えるものなら何でも写せる」というコピーで「エルマノックス」という乾板のアトム判(645程度)のカメラに取り付けられて売られました。
次にベルテレ博士は、エルノスタータイプレンズをライカ判に適合するようなクオリティにするべく、1931年にコンタックス用の「ゾナー」50ミリF2.0を設計しました。このあたりからいわゆる、ツァイスとライツを先頭にした各レンズメーカーによる大口径レンズ設計戦争が勃発するようです。
現在の標準大口径レンズ設計ではそのほとんどがガウスタイプ(ダブルガウスとかプラナータイプ)に取って代わっていますが、1950年前後という時代にツァイスが選んだゾナー50ミリF1.5は、ライツが選んだズマール50ミリF2.0等を明るさでも収差の少なさでも凌駕し、大口径レンズ時代を牽引役となったのです。その理由は、コーティング技術が無い時代ですから、レンズ同士と空気の境で起こる内面反射が像のコントラストを下げてしまう原因となったからです。ガウスタイプと異なりゾナーは、張り合わせ面を多くした3群7枚という構成によって、空気面を少なくすることで、大口径でありながらコントラストを上げたという訳。
で、コシナ・ツァイス。
コシナが言う所の「ゾナー設計を現代に蘇らせた」とありますが、実は完全なるオリジナル設計に忠実ではなく、4群6枚という構成になっています。具体的には、過去ゾナーは2群目が3枚の張り合わせで、トリプレットタイプで言う所の、中央の凹レンズのパワーを作り出しています。先の通り、コーティングが無い時代のため、収差補正と空気面を考えた設計なんです。しかし現代のコシナ・ツァイスは、この部分を分けました。なんてったって「T* コーティング」という最高技術がありますから、あえてコストがかかる3枚張り合わせをする必要がないんですもんね。
ま、今の自分にとって、ゾナーのファンになったので、ここはオリジナルに忠実な設計も見たかったなーと思いますが(笑)
4群6枚の新ゾナーであってもやっぱりゾナーなのかと思うのは、この「コントラスト重視」的な光の導かれ方ですね。コントラストというと曖昧なので、明暗の差がきっちりと再現されているとでも言いましょうか。ピント面とボケの境にキリッとした違いを感じます。人間の視力で例えるならば、プラナーは1.0でゾナーは1.5あるいは2.0ってイメージです。
今日の写真はちょっといぢわるで、夕暮れ時に電灯へ直接向けています。さすがに多少の滲みが発生しちゃっていますが、T* コーティングのおかげかフレアーを余り感じにくいです。これを0.95で撮影したら、バーンと虹色のゴーストとフレアーが発生することでしょう(笑)
今までがガウスタイプばっかりだっただけに、このゾナーが持つ爽快な切れ味は、クセになりますね。特に高コントラストタイプのベルビアやベルビア100Fやプロビア100Fといったリバーサルとの組み合わせで、もっとさまざまな方向性で撮ってみたいです。はい。
「電灯」
C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM
Leica MP LHSA Edition Grey Hammertone Finish
FUJIFILM Provia 100F
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