ナイチンゲールの世界 (44)
ナイチンゲールの世界 (44)昨日の(43)の右側のグラフですが、1855年の1月(時計の6時の部分)の伝染病による死亡率は、1022,8と1000を越えています。こうしたことが何故起きるのでしょうか。これは死亡率の計算では時折ありうることです。本論と少しはなれますが、ナイチンゲールが作成したグラフに使われた死亡率の計算法を記します。死亡率は当時も現在も千分比で計算されます。1千人を単位にして年間で何人が死亡したかを示す指標です。分母に集団の人数を、分子に年間の死亡者数を置き、割った数字を1000倍すると千分比は出ます。さて、そこで1855年1月の死亡率です。分母はクリミアに派遣された軍人の総数です。毎月変動しますが、こちらは年間の平均を出します。これに対して伝染病の死亡者数は平均ではなく、1月の死亡者数2,761人を12倍します。求めるのは55年1月1ヶ月の死亡率ですから、1月の死亡者数が、同じペースで1年間続くと仮定して、計算するのです。そのため12倍して年間の推定死亡者数を出すのです。1年間の推定死亡者数を、年間を通じての平均兵力で割り、千分比に治して月刊の死亡率とするのです。1855年1月の死亡率計算では、平均兵力は32,393人、伝染病死亡者は2,761人です。後者は12倍されますから33,132人となります。割り算すると、確かに1を越えます。これを千倍するのです。答えは1022,8となりますので、1000人当りりの死亡率が1000を越えてしまうのです。1ヶ月の死亡者数が、1年間続くと仮定して計算されるところから、月間の死亡率については、時々こういう紛らわしいことが起きてしまうのですね。 堅苦しい話で失礼しました。 続く