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2017.12.29
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​   納豆のぬめりだけでいいんだよ​​​​​

 

  敗戦後のことだった

  何年後かははっきり覚えていない

  食べ物は乏しく

  庶民はやっとの思いで命を繋いでいた

​  それでも雑炊や水団から辛うじて脱けだし

  ​やっとお米のご飯を食べられるようになっていた

  ​それももしかして闇で手に入れた

  お米だったのかもしれない


​  四畳半の真ん中に置かれた丸いちゃぶだい

  その上にお茶碗が三つ

  ​ご飯が盛られている

  納豆の入った小鉢が二つ

​  ご飯のそばにある

  それだけだった


  でも納豆の入った小鉢は二つだけ

​  妹と私の分だけ

​  母の分は無かった


​  「お母さんの納豆は?」

​  「母さんはね、納豆のぬめりだけでいいんだよ。」

  「そんなんじゃだめ。栄養にならないから。」

​  妹と私は代わる代わる一鉢の納豆を母の方へ 突き出した

​  その度に納豆は母の太い腕で突き返された

  「お前たちは育ち盛りなんだから食べなくてはだめ。

  母さんはいくらだって蓄えがあるんだから。」


  何回かちゃぶだいを納豆が行ったり来たりしたが

​  とうとう親心が勝って私たちは納豆を食べる羽目になった

​  するすると納豆が喉を通っていくとき

​  涙に濡れたしょっぱい味がした

  でもそれは一級品の味だった


​  今でも納豆の糸をうまく絡めて

​  美味しそうにご飯を食べる母の姿が目に浮かぶ

  子のためには自分を犠牲にすることを

  決して厭わない母だった
            (by ドレミ・どれみ)
                -澪48号掲載ー

​​​​​​​​​​​​​​​





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Last updated  2017.12.29 22:00:49
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