絵里ちゃん
2.朝絵里ちゃんは、朝が一番好き。朝のひんやりとした空気を感じながら、まどろんだ時を過ごします。郊外に住んでいるから、時々とおりすぎる車の音以外は、静かです。そして、そんな時間だと窓の外で鳥たちがさえずるのが聞こえます。うぐいすにかっこう、それからすずめたち。時間にせかされていたときには、ぜんぜん気づかなかったものだけど、今はいろんなさえずりが、合唱するのが聞こえます。お母さんは、仕事に出かける準備のために台所に立ってお弁当を作ります。絵里ちゃんの分と2つ。学校に行っていれば、給食があるのだけど、通学しても、一日いられないことが多くて、そんなときは、自分で台所にたって食事を作ります。本当は、中学に入って小学校のときのもろもろの過去を忘れて、新しい学校生活が送れたらよかったんだけど、今度は、勉強にもついていけなくなったのです。「絵里ちゃんは、賢いから休んでもすぐにおいつけるから大丈夫」と小学校の時には、先生にそのように言われたものですけど、今は取り戻すのがむずかしくなってしまいました。お母さんは、フリースクールを探してくれました。でも、送り迎えのいるフリースクールが一箇所見つけただけで、仕事しながらは、通わせてあげられない、とあきらめています。絵里ちゃんも本当は居場所がほしいんです。友達もね・・・