カテゴリ:投資戦略の比較検討
電力会社を取り巻く状況の悪化が続いています。 電力供給の観点からは、稼動できない原子力発電設備に係る固定費が重くのしかかり、老朽火力をフル稼働させることにより、燃料費の負担も大幅に増加しています。 需要の観点から見ても、節電対策の進展等により、12年7月の電力需要は東北地区を除いて軒並みマイナスになっています。 この結果、九州電力の4月~9月期の連結最終損益見込が▲1,650億円と発表されるなど、本業の収支が大幅に悪化中。同社のほか関西電力、四国電力などが中間配当が見送る計画であるといった報道もなされています。 電力株といえば、定期預金の代わりのように見られていた時期もあり、配当目当てに電力株を購入していた投資家にとっては、辛いニュースであるかと思います。 このように問題を抱えた電力株は、一見すると投資対象として不適格なように思われるところです。しかし、往年の名投資家の中には、このような経営の悪化した電力株に投資をし、大きな利益を上げた人達もいます。 1970年代~80年代に米国で「マゼランファンド」を運用していた、ピーター・リンチが、その代表例です。 ■ ■ ピーター・リンチというと、10倍高(テンバガー)の狙える小型の割安成長株に投資するといったイメージを持つ人が多いかもしれませんが、ファンドの規模が巨大となってからは、むしろ大型の業績回復株から多くの利益を稼いでいました。クライスラーやフォードといった自動車株を、底値で大量に買っていたことは有名です。 そんなピーター・リンチの成功した投資先の一つに、ゼネラル・パブリック・ユーティリティーズ(以下「GPU社」)という企業があります。1979年3月に、スリーマイル島の原子力発電所事故を引き起こした企業といえば分かりやすいかもしれません。 GPU社の事故前の株価は9ドルありましたが、事故から約1年経った頃には株価は2ドルを下回る水準まで下落していました。「被害が発生した」段階では、巨額のコストが発生する一方、それを価格に転嫁することが出来ず、株価も相応に下落するからです。 このような災害に直面した公益企業は、設備投資を縮小し、小額な予算案を採用し、配当の削減などの生存策を打つこととなります。 経営コストの削減に成功した場合、利用者の支払う料金で経営が賄えるようになり、次第に株主へある程度の利益を提供できるようになっていきます。 事故後に2ドルまで落ち込んだGPU社の株価は、上記のような経営状況の改善を経て、1980年末には20ドルを超えるようになっていました。リンチはこの上昇を掴み、同社株から6,900万ドルの利益を上げたとのことです。これにより、GPU社はマゼラン・ファンドの運用実績の中で、7番目に儲かった銘柄という栄誉を受けることとなりました。 「問題を起こした公益株に投資すると、簡単に利益を上げることができる。無配のときに買って、復配するまで保有し続ける。これが非常に成功率の高い戦略だ。(『ピーター・リンチの株式投資の法則』P277)」 ■ ■ 僕は今のところ電力株を保有していませんが、無配のニュースがちらほら聞こえてきたため、上述のピーター・リンチの発言を思い出して株価動向に注目しています。 特に水力や石炭といった低コストの電源を多く持ち、電気料金が本州で最安値である北陸電力(9505)や、以前買っていたことのある沖縄電力(9511)は妙味アリ?・・・と思っています。 次に悪材料が出てきたら、少しずつ購入してみたいと思います。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.09.08 13:43:08
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