2024/01/04(木)00:00
***冬牡丹(ぼたん)***
苞(つと)割れば笑みこぼれたり冬牡丹 虚子
苞(つと)は、わらで作った霜よけです。中から現れるのは大輪の冬牡丹、大輪の笑みが咲きこぼれます。「咲」には「笑う」の意味もあります。
雪間の牡丹の美しさは、見る者も笑顔にしてくれます。
火を焚かぬ煖爐(だんろ)の側や冬牡丹
朝下る寒暖計や冬牡丹
冬牡丹頼み少なく咲きにけり 子規
子規の時代の寒暖計は、赤いアルコールが上下するアナログなスタイル。気温の上下が一目瞭然です。
『墨汁一滴』の冒頭一月一六日の記述に「病める枕辺に巻紙状袋など入れたる箱あり、その上に寒暖計を置ける。」とあるので、自宅、病室の寒暖計でしょう。この寒暖計に、新年を寿ぐ輪かざりをつけたという記述もあります。
病床にあって、見る物も限られていた子規を慰める寒牡丹の句です。
引用元:高浜虚子・選『子規句集』岩波文庫
『虚子五句集』岩波文庫
*写真は上野東照宮ぼたん園で撮影