60ばーばの手習い帳

2024/01/04(木)00:00

***冬牡丹(ぼたん)***

詩とやまと歌と(170)

​苞(つと)割れば笑みこぼれたり冬牡丹  虚子  苞(つと)は、わらで作った霜よけです。中から現れるのは大輪の冬牡丹、大輪の笑みが咲きこぼれます。「咲」には「笑う」の意味もあります。  雪間の牡丹の美しさは、見る者も笑顔にしてくれます。 火を焚かぬ煖爐(だんろ)の側や冬牡丹 朝下る寒暖計や冬牡丹    冬牡丹頼み少なく咲きにけり   子規  子規の時代の寒暖計は、赤いアルコールが上下するアナログなスタイル。気温の上下が一目瞭然です。  『墨汁一滴』の冒頭一月一六日の記述に「病める枕辺に巻紙状袋など入れたる箱あり、その上に寒暖計を置ける。」とあるので、自宅、病室の寒暖計でしょう。この寒暖計に、新年を寿ぐ輪かざりをつけたという記述もあります。  病床にあって、見る物も限られていた子規を慰める寒牡丹の句です。             引用元:高浜虚子・選『子規句集』岩波文庫                 『虚子五句集』岩波文庫             *写真は上野東照宮ぼたん園で撮影

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