引き籠もり鑑賞【其の十】幕末遙かなり
私の所蔵刀は新々刀が殆どです。新々刀と云っても、水心子正秀に代表される文化文政時代では無く、最幕末期と云える慶応年間に作刀された新々刀で有ります。文化年間【1804年~1818年】から慶応年間までは約60年の隔たりがあります。当時、人の一生は45年程度だったことを考えると、60年と云う歳月はとてつもない長さであったろうと推測できます。文化文政時代は極めて平和な時代でありました。幕末の息吹も感じられず、刀の姿も荒々しさは無く尋常な姿の物が殆どです。嘉永6年【1853年】ペルリ来航以降、急激な時代変遷が派生し幕末動乱期へと突入することになります。前段に記載した様に、私の愛刀は最末期の慶応年間に作刀された刀が多いのです。郷土刀の龍泉子驍邦師弟の刀、伯州住秀春の刀、短刀等ですが、夜半静かに鑑賞するのも、比率的には彼等が鍛刀した刀が多いです。光の反射で鍛え目が良く見て取れませんが、細かに鍛えて地沸が付いています。下記拡大地肌を御覧ください。慶応年間の伯州住秀春の刀ですが、匂い口乱れず均一に焼き入れしています。華やかさは在りませんが、地鉄に強さを感じられます。