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カテゴリ:詩
粉雪舞い散る駅のホームで
私はあなたの乗る汽車を待っている 小さな傘の下で あなたと私の肩だけが触れている もう二度と くるおしく求め合うことはないと決めた ふたりの肩だけが 今はセーターの毛糸ごしに 互いの体温を感じている もう二度と感じることはできないだろう あなたの温かさ 私はすべての神経を 触れている右肩だけに 集中して目を閉じる 走馬灯のように巡る あなたの笑顔 怒った顔 真剣な顔 気がつくと 右肩の触れている箇所だけが ぼんやり輝き じんわりとした温かさで 今にも溶けそうだ ああ 肩が触れているだけで 私のすべてがもう一度 あなたに溶けて消えそうだ 降りそそぐ粉雪は プラットフォームに着地すると 次々に溶けていく 私とあなたは 二度ともどらない時を 一緒に過ごし お互いのために 今日の別れを決めた ああ 汽車が永遠に来なければいいのに このまま降りそそぐ雪に 一緒に埋もれてしまえばいいのに 遠いトンネルの奥から 汽車のヘッドライトが近づいてくる 眩しい光が 粉雪を煌めかせる 金切り声をあげて 停車した車輌の扉が シューと音をたてて 今、開いた お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.02.04 18:27:50
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