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カテゴリ:詩
遥かこの星の裏側で
遠いふるさとの島を想いながら ひとり死んでいく私 愛するひとや子や孫が ベッドの周りを埋める中で 別れを告げる最期ではない 言葉の通じぬ異国の路上 青すぎる空を瞳に映したまま 仰向けの 息の止まった体を自覚する 育ててくれた両親や祖母 子どもを産んでくれたあのひと そのすべてを投げ捨て愛したひとも 死に行く私に付いては来られない 一瞬きりの人生で 出会えたひとすべて 末期に間に合ったのと同じこと それなのに最期にかけた言葉は あんなにも素っ気ないまま チャンスはまだあると誤解して そのときこそ優しくしようと思いながら あらゆる機会を逃しつづけたんだ ごめんもありがとうももう届かない 開ききった瞳孔に 遠い雲が流れるだけ この星に産まれて成し遂げたことなど 何かひとつでもあったろうか この星を去るまでにバトンするべき愛を 誰か一人にでも手渡しただろうか 今になって 出会いのすべてを抱きしめている そんな私の想いはもう届かない 皆の笑顔も 私の与えた悲しみに歪んだ顔も 開ききった瞳孔に 映っては消える走馬灯 天国の扉が開いている今 何ひとつ手渡せなかった後悔が 涙となって頬を伝う 望んだものすべては 初めから 降りそそいでいた 今 気がついてももう 私の言葉は 痙攣する喉元を覗きこむ 褐色の異邦人に託せない さようなら さようなら さようなら さようなら ごめんね 好きだよ ありがとう お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.03.14 13:18:00
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