カテゴリ:小売業
![]() 村田 紀敏(むらた・のりとし)さん (株)セブン&アイ・ホールディングス【東証1部:3382】社長 1944年東京都生まれ。法政大学経済学部卒業。鉄鋼メーカー勤務を経て、71年にイトーヨーカ堂入社。同社企画室長、販売事業部長、最高財務責任者などを歴任し、2005年、セブン&アイ・ホールディングス社長兼最高執行責任者(COO)に就任。座右の銘は「思い煩うな。明日になれば、すべてがわかる」。 イトーヨーカ堂に入社する前、村田さんは鉄鋼メーカーに5年半勤務した。入社してすぐに配属されたのは、主に工場の原価計算をする経理部門。最初に受けた工場の現場研修で、その後のサラリーマン人生の柱となる、非常に印象深い体験をしたという。 工場の様子見続ける 工場の現場研修ではまず、白い板を駅弁売りのように持たされ、「工場の様子を見ながら一日中立ち、そこに気がついたことを何でもいいから書け」と言われました。最初のうちは気づくことも余りなく、10個も書ければよい方でした。それを品質管理をする工場診断部門の課長のところへ持って行くと、「これしか書けないのか」と叱(しか)られます。そのたびに、だんだん気づくことが増えていきましたが、そのうち、「工員が朝早くから来て、いろんな仕事をする。そこから入らないと駄目だ」と。 ある時、工場が始まる前に行き、いつものように立って見ていたら、職長さんが、機械を動かす前に手でガチャガチャと揺り動かしている。何かやっているなと思い、板に書いて課長に出すと、「これは何だ」。分かりません、と答えると、「なぜ職長に聞かないんだ」と言うので、翌日、職長に聞こうとしましたが、「うるさい。仕事が始まっている」と、けんもほろろです。 工員は午後4時に仕事を終え、お風呂に入りにいきます。事務職の僕も5時半の終業後に一緒に入り、職長さんの背中を流しながら、改めて聞いてみました。すると、「機械は温度や湿度で調子が変わるから、動かしているんだ。そうしないと不良品がいっぱいできて、原価が上がってしまう」と教えてくれたのです。 そのことを課長に報告すると、「やっと分かったか。お前はこれから数字を扱う人間になるんだろうが、数字を作るのは現場であり、数字の後ろには必ず人がいる。それを肝に銘じろ」と言われました。 家族の存在に生きがい 小売業はすべて現場主義で、労働集約型。人が業績を作り出しています。今は何かと「厳しい時代」と言われますが、右肩上がりの時代は、人の価値が生産の一歯車のように思われていました。今は、人の工夫があって初めて業績が伸びていく。「数字の後ろには人がいる」という言葉は、40年たった今でも強く心に残っています。 その工場は、親会社の下請けとしていろんな構造物を造っていました。1970年の大阪万博では、「お祭り広場」の天井を造りました。工場の班長が、息子さんと夏休みに行ったんでしょうね。帰ってきて、「村田、読め」と、息子さんの作文を見せました。そこには「お父さんはすごい」と書いてありました。班長は「息子が作文に書いてくれるのが生きがいなんだ」と。 働く時の生きがいには、給料なども最低限ありますが、やはり、家族など、自分の存在価値をすごく意識させてくれるものが大きいと思う。自分の人生のスタートの段階で、こうした経験をしたのが今も役立っています。(続く) ◆セブン&アイ・ホールディングス イトーヨーカ堂、セブン―イレブン・ジャパン、ミレニアムリテイリング(そごう、西武百貨店が基幹事業)を中核とする日本最大級の流通持ち株会社。傘下企業98社、展開エリアは16か国・地域に及び、年間売上高は約9兆1000億円。 (2008年6月25日 読売新聞) バックナンバー コンビニ個店主義を重視 - 2008年02月01日 関連サイト セブン&アイ・ホールディングス セブン&アイ・ホールディングス - Wikipedia 株価 Yahoo!ファイナンス - 3382.t セブン&アイ・ホールディングス(東京証券取引所) 3382 (株)セブン&アイ・ホールディングス セブン&アイ NIKKEI NET ... 3382セブン&アイHLDGS|株式投資顧問会社|イーキャピタル ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年07月02日 19時32分09秒
[小売業] カテゴリの最新記事
|
|