カテゴリ:小売業
![]() ![]() ビジネスパーソンの悩みを解消するためのヒントになる番組「知る楽 仕事学のすすめ」(NHK教育テレビ)。毎月、仕事の達人にスポットを当てて、成功の秘けつや、ノウハウ、理念を語ってもらうという番組だ。今月登場するのは、(株)ファーストリテイリング 【東証1部:9983】会長兼社長の柳井正氏。視聴者とのつなぎ役である「トランスレーター」は、勝間和代氏だ。 昨年、爆発的にヒットとした「ヒートテック」など、独創的な商品を開発し、長引く不況の中でも利益を上げ続けているユニクロ。それを率いるのがファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏だ。 机の上に並べられたドラッカーの著書。ざっと20冊はある 実は柳井氏が師と仰ぐ人物がいる。20世紀を代表する経営学者、ピーター・ドラッカーだ。柳井氏はドラッカーの書を数多く愛読し、彼から経営の真髄を学びとってきたという。 番組中の勝間氏のインタビューに、柳井氏はドラッカーについてこう語る。 「本質的にビジネスというのは、昔も今も古今東西変っていないと思うんです。彼は本質を突いたようなことを書いているんで、その中で我々にとってここに書かれていることはどういう意味なのかと考えれば、おのずと戦略が出てくるんじゃないのかと思います」 勝間氏が「ある意味指針になっているわけですね」と問うと、柳井氏は 「そうですね。会社に対する考え方とか経営に対する考え方は、ドラッカーが僕のために整理してくれたんじゃないかって思ってるくらいです(笑)」 と親しみを込めて語る。では、そのドラッカーの理念とはどんなものかをまず見てみよう。 ドラッカーのいう「顧客の創造」とは? 1954年に刊行されたドラッカーの著書『現代の経営』。そこにドラッカーが最も重要だとした理念が記されている。 それが「顧客の創造」だ。 その代表的な事例として挙げているのが、当時、全米一の小売業、シアーズ・ローバック。シアーズは20世紀初め、衣服や雑貨、家具などの通信販売で成長を遂げた企業で、農村部の消費者に狙いを絞っていた。 当時、農村部では、消費者は都会の店に行く事はほとんどなく、シアーズはそこに大きな潜在的需要が眠っているはずだと考えた。 カタログを作り、常に新たな商品を掲載、定期的に送り続ける。当時としては画期的な販売方法だった。そのカタログは全米に行き渡り、「農家のバイブル」とまで言われるほど大人気となった。 手つかずの市場を発掘し、新たな顧客を作り出す。それをドラッカーは「顧客の創造」と定義したのだ。 ファーストリテイリング社内には、柳井社長が考えた経営理念が掲げられている。 その第一条が「顧客の要望に応え、顧客を創造する経営」。 この理念について柳井氏は語る。 「まず、お客様の要望にこたえないといけない。お客様がどういうことを考えているのかっていうことをやっぱり想像して、その要望にこたえながら。だから、ファンを作るのと一緒だと思うんですよ。だからファンをいかにして作っていくかということが大事なことだと思います」 また、ドラッカーを引き合いに出してこうも語る。 「ドラッカーが言っているんですけど、顧客の声だけ聞いても、顧客はそれこそ、買う可能性がある人の何百分の一、何千分の一あるいは何万分の一かもしれません。ですから顧客以外の人が反対になぜ買わないのか、その人たちに買ってもらうためには何をしたらいいか、ということを考える。それともう一つ、顧客の人に一枚買ってもらったら、その次に買いたいと思ってもらうには何をしたらいいのか、みたいなことが多分商売の基本だと思います」 「なぜ買わないのか」や「次に買ってもらうためには……」といった問い直しにこそ意味があり、それこそが商売の基本なのだ。 「顧客の潜在需要を掘り起こせ」 では、実際にユニクロでは「顧客の創造」をどのように実践してきたのだろうか。 最近の「顧客の創造」の例が「ヒートテック」だろう。薄くて暖かい生地が人気を集め、昨年は2800万枚を売り上げた商品だ。 この商品の開発はどのようにしたのか、柳井氏はこう語る。 「企業の人でも、小売業の人でもそうだと思うんですが、えてしてやっぱり内向き思考、自分たちは肌着を開発していると思い込むんです。でも僕はヒートテックを開発してて、ものすごくチャンスのある商材だと思った。こういうのが肌着でなくなる可能性がある」 「肌着ではない」という観点から、次の顧客創造へつながったのだ。 「よく見たらTシャツなんですよね。あるいはアウターでも着れる。重ね着もできる。お客様の中に寒いとき、2枚3枚重ね着する方がいるんですよ。色違いでも。例えば、ロングのTシャツとタンクトップみたいなものを組み合わせたら、重ね着のおしゃれみたいなのができるし、ヒートテックでワンピースみたいなものもあるので、そういったものといろんなものの組み合わせ、僕はもう、コンポーネントウエアだと思うんですよ。で、そういったことがなかなかやっぱりわからない。『ヒートテック=肌着』、で、肌着ならファッション性はいらないんですよ。でも、ファッション性を入れないと、あらゆる人に買ってもらえないんです」(柳井氏) この発想の転換が、肌着(インナー)を超えたこの商品の開発につながった。 NHKの番組では、「ヒートテック」の開発担当者にインタビューし、どのようにしてこのヒット商品が生まれたのかに迫っている。そちらは番組でじっくり見てもらうことにしよう。 番組の最後で勝間氏は、ドラッカーについて言及しながらこのようにまとめた。 「ドラッカーは企業の目的の中で一番大事なことは『顧客の創造』、新しい顧客を創ることだと言いました。これは何を意味するかというと、どうしても企業は自分たちが作りたいものを、あるいは作れるものを作って顧客に渡してしまう。また、今、現在自分たちの商品を買ってくれるお客さんを顧客だと思ってしまうが、そうではなくて、自分たちの企業の外にいるお客さんが真に欲しているものが何かということを見極め、需要があるからこそ企業の存在価値があるということを何回も何回も繰り返し訴えている。私たちも自分たちの仕事を振り返った場合に、本当に顧客を創造しているのか、安易な仕事に流れていないか、自分の企業の外のチャンスを見逃していないということを問い直していくべきだろう」 nikkei BPnet - 2009年6月4日 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月13日 07時41分28秒
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