小説すばる　2021年4月号

鏡の記憶　西尾潤

奪われていくだけの毎日に満足するのが幸せ？
幼なじみの洋輔くんの素敵な「おうち」にいるときが、
マミにとって唯一の心休まる時間だったのに・・・。
（小説すばるより転載）

中学1年生のマミの母親は半年前に
突然倒れて亡くなった。
化粧品のセールスの仕事をやっていた
母親は義父と再婚して三年だった。

マミは義父と二人で暮らしているが、
義父はギャンブル依存症で、
無職の上に、借金があって、
借金取りに追われている。

借金取りは家にまで押しかけてきて、
義父を脅してくる。

マミの家庭は火の車で
電話も料金未納で通じていない有様。

そんな状態なのに、義父は
風呂場でマミを覗いてくるし、
マミのタンスの服をいじった、
という怪しげな行動をとっている。

中学のクラスで孤立しているマミの
唯一の友達は幼なじみの洋輔くんだけだ。

幼稚園の時からの友達の洋輔くんは
「いろいろなことに時間がかかる」人間で、
担当教師の「ふっきー」こと吹上哲史も
いろいろと心配している。

ある日、洋輔くんの家で事件が起こる。

事件のことで様々な噂が流れて・・・。

マミを取り巻く環境は最悪、といっていいです。
八方塞がり、と言える状況で
唯一の友達の洋輔くんに異変が起こります。

それによって話はますます悪い方に向かいます。

女子中学生の闇のバイトやら、
不倫や親の借金やら、
暗部が次々と展開されて、
読むのが辛くなってくるほど。

怪しい動きをする担当教師のふっきーの
行動で、話が変わってきます。

最後は意外な展開になります。
ネタバレになるので何も書けませんが
かなり好印象で終わるのは確か。

ネグレクトのような小説ですが、
ユニークな切り口で面白かったです。