隠者の遠近見聞回想録

なんでもそうだが、身近かなものには、あまり有り難味を感じないものだ。

神社やお寺に参るのも、わざわざ遠いところを有り難がって出かける。

近所に由緒正しく格式も高い寺社があるのに、その価値を認めたがらない。

逆に、遠方からの参詣客が多かったりする。

温泉やスーパー銭湯でも、近場にイイところがあるのに、

遠いところの方がヨク思えたりする。

雑誌やＴＶ番組などで紹介されてはじめて、

「へえ、そうなんだ」と消極的に認める程度だ。

それは、「人間」にもいえる。


本当は、長年、親しんだ身近な人のなかにこそ有り難い人が多いのに、

普段はそのことになかなか気づかない。

幸福も、いつも身近かにあるのに、

それに気づかず、遠いところに求めてばかりだ。

山の彼方の空遠くに、幸いなど、実は住んでいないのだ。


　

近くにあるのに、遠くに求めてばかりいるから、幸せを実感できない。


遠い人からの誘いは、とてもアデヤカで実に悩ましい。

そこに行きさえすれば、災いから解放され、

全てが解決されてすぐにも幸せになれそうな気分だ。

しかし、残念ながら、

遠い人は、いつまでも遠い人でしかなく、永遠に会えない人なのだ。

遠い人からのあでやかな誘いに惑わされてはいけない。

今日、転職の挨拶にきた人がいるが、ちょっと残念だ。