改憲運動を展開している謎の団体?日本会議が家族の理想像はサザエさん一家として現行憲法の24条を批判しているという。日本会議なる団体の正体はよくわからないが、いわれているように現政権に近い存在だとしたら、まさに非正規雇用者やワーキングプアを量産し、結婚できない若者を増やしてきた元凶のようなところが、いまさら家族や子育ての重要性をとくなんて笑止千万なのだが…。
http://mainichi.jp/articles/20161103/k00/00m/040/159000c
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サザエさん一家については娘夫婦との同居こそ少数派であったものの、三世代同居、未婚の兄弟姉妹との同居など、かつての伝統的な家制度では普通であった家庭が舞台になっている。戦後一貫して、結婚した子供が親世代と同居するという形の三世代同居は減ってきたし、それ以上に、兄弟姉妹、つまり孫から見れば叔父叔母が同居するという形の家は激減し、今では天然記念物級に少なくなっている。
これは意識の問題というよりも産業構造の変化が大きいのではないか。
かつては農業にみられるように家の背景には生産手段としての家業があり、その家業をささえるために同居という形式は合理的だった。また、特に農業がそうなのだが、家業の中では、大抵の人は手伝い的なものでも役割をもつことができ、そんな中で、夫と別れて実家に戻ってきた姉妹や失業して戻ってきた兄弟も役割をみつけ、生きていくことができた。いわば家業が、福祉のような役割も果たしていたわけである。
今日のようなサラリーマンというか雇用者が勤労者の主流になっているような社会では、三世代同居、ましてや叔父叔母同居などとても無理だとしか思えない。たしかにサザエさん一家は父も夫もサラリーマンであるが、いまどき都会ではありえないような広い家だからこそ、ああいった家族形態が可能なのだろう。それに父と夫はよく一緒に飲むくらいに気が合うということも大きい。
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昔の大家族の中でも、無給の使用人のような立場で息を詰めるようにして暮らしていた叔母や忍従を強いられただけの嫁もいた。大家族だってよいことばかりではなかった。生活保護申請には、今でも三親等くらいまで扶養照会の通知がいくというのだが、大家族賛美と家族による扶養協調の流れが、ますます「親族に迷惑をかけたくない」、「親族に恥をさらしたくない」という理由により、必要な保護申請を躊躇したり、申請しても保護が受けられなくなっていくということにつながらなければよいがと思う。
今でもこうした扶養照会の通知があることで、申請をためらう人は多いという。