東京電力福島第一原発事故後、
自閉症の子どもやその親たちが避難生活で周囲の理解や協力を得られず、
苦しんだことを伝えようと、
福島県大熊町の女性が紙芝居の上演を続けている。
できる限り多くの人に理解して欲しいと願う。
3月9日には初めて東京で上演する予定だ。
「いやだあ! わあああああ」。
避難所で自閉症の子どもが大きな声を上げる。
すると周囲から厳しい声を浴びせられた。
「親の責任で頼むよ。こちらはクタクタなんだから」
と。
こういう場面がある紙芝居の上演をしているのは、
大熊町から福島県いわき市へ避難している元看護師、
田子島屋(たごしまや)邦子さん(63)だ。
昨春以降、いわきや群馬県内、千葉県内など計5カ所で朗読をしてきた。
活動のきっかけは親戚家族の体験だ。
親戚には震災当時小学生の子どもがいた。
軽度の自閉症で、周囲の音に敏感だった。
震災後、住んでいた大熊町に避難指示が出され、
福島県田村市の体育館へ避難した。
だが、子どもは避難所での周りの話し声や視線が気になり、
次第に落ち着きがなくなっていった。
子どもが騒がないよう親もなだめていたが限界だった。
わずか3日で避難所を後にし、その後は親戚宅へ身を寄せた。
田子島屋さんは
「あの時、子どもを受け入れてくれる場所があったら、
苦労せずに済んだだろう」
と語る。
震災後、田子島屋さんが看護師として勤務していたいわき市内の病院でも、
自閉症の子どもを持つ親から震災当時の苦労話を聞いた。
避難所で、自閉症の子どもは「あー」とか「うー」と、
大きな声を出してしまう場合がある。
そうした子どもに対して、
怒鳴ったりにらんだりする人たちがいた。
避難所にいられず、
車の中で何日も過ごしたという話も聞いた。
親戚家族の体験や病院で聞いた話を元に
田子島屋さんが中心となってシナリオを考え、
これまで計6本の紙芝居を作った。
絵は、被災地に紙芝居を送る活動をしている市民団体
「まち物語制作委員会」(広島県)が担当した。
大熊町の友人らと各地を回り読み聞かせを続けてきた。
田子島屋さんは
「災害が起きた時でも、
自閉症の子を温かく見守れる世の中になってほしい」
と話す。
東京での公演は3月9日午後2時から、小平市中央公民館で。
入場無料。
大熊町の歴史など他に2本の紙芝居も合わせて上演される。
問い合わせは、田子島屋さん(090・2987・3061)へ。
[朝日デジタル]
実体験に基づいた紙芝居は、
より深い理解を得られるのでしょうね。☄