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2011.04.23
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カテゴリ:明治~・劇作家

  『おふくろ』田中千禾夫(角川文庫)

 小説家が書いた戯曲については、かつて本ブログでも何度か取り上げました。
 いくつか取り上げて、小説家の書く戯曲というのが、「白樺派」にけっこう多いことに気が付き、なかなか面白いものだと思いました。

 なぜなんでしょうね。
 ぼんやりと思うのは、演劇でも映画でもテレビドラマでも同様だと思いますが、享受者にかなりの数を要求するタイプの芸術(芸能)は、白樺派的理想主義傾向の方がふさわしいであろうというくらいのことは、ぼんやりと感じます。
 (とはいえ、武者小路実篤の『その妹』の徹底的なバッドエンドとか、自然主義作家・正宗白鳥の、やはりバッドエンド作品とかもありますが。)

 一つのジャンルのもの(何のジャンルでもいいのですが。別に文学じゃなくて、音楽とか、スポーツなんかでも)があれば、そこには一つの「文法=ルール」が成立します。
 まー、当たり前でしょうかね。

 そんな意味における戯曲の文法が、実は私には、まだあまりよく分かっていません。
 若い頃ですが、一時期、かなりまとめて戯曲を読んだことがありましたが、あの戯曲というスタイルは、最初取っつきにくい感じのものを持ちながら、その部分をクリアすると、後はマニアのようにはまりますね。そんなことないですか。

 話を少し戻しまして、「戯曲の文法」ですが、確か三島由紀夫でしたか(もちろんこの小説家も、とても優れた戯曲を沢山書いています。評論家によっては、三島の文学で最も優れているのは戯曲であると言い切っている人もいるくらいです)、彼が「戯曲の文体は舞踏の文体である」と言っていたように思います。

 なるほど、上手に言いますね。
 今回取り上げた文庫本(二作の戯曲が収録されています)の表題作『おふくろ』についていいますと、その文体の舞踏性は、「方言」が担っていますね。

 戯曲と「方言」については、かつてかなり本格的な研究や意見交換が、劇作家や研究者の間であったのではないかと、その内容については何にも知りませんが、そんな記憶があります。
 木下順二氏なんかが中心に、何らかの主張をなさっていたのではなかったでしょうかね。

 戯曲だけでなく、文学全般と方言についても、これもたぶんいろんな見方見解があるでしょうね。
 私は関西在住者なので、関西弁で書かれた文芸作品については、とっても評価が甘いんですが(いえ、これはあまり良くないことだという気はしているんですがー)、ちょっと思い出したのは、長塚節の『土』のことであります。

 内容はほとんど忘れているんですが、あの作品の中にたぶん茨城県あたりでしたか(違うかな。違っていましたらすみません)、その地の農家の方言(時代は明治ですかね)が出てくるんですが、それが何を言っているのかあまり分からなくて、読んでいて困ったことを思い出します。
 ただでさえ重苦しいテーマの小説でしたが、その上科白の少なくない部分が判読不明であったものですから、大いに難儀した覚えがあります。

 さて、相変わらずの「わがまま文章」で、話があっちこっちに飛んでいって、誠に申し訳ありません。
 『おふくろ』に用いられている「方言」についてでした。
 本作品内における「九州弁」の効果には、圧倒的なものがあります。

 こんな書き方をして、誤解を生んでしまっては困るのですが、九州とか東北とか、文化に於いても都会地に「搾取」されていそうな地域のものが、瀬戸際で居直るようにその文化の粋である方言を「一斉解放」した時、そこには圧倒的なエネルギーや、ダイナミズム、リアリティーなどの、地鳴りを伴うような放出があります。

 同じ戯曲で、かつ同じ九州弁ということで類似の用例を挙げるなら、つかこうへいの『熱海殺人事件』が思い浮かびます。あの作品の中の九州弁も圧倒的でした。

 さてそのように、文体については、とてもセンセーショナルかつ、瑞々しいものを持ちながら、一方ドラマの展開においては、これもまた見事に「ドラマツルギー」の感じられないものであったように感じるのですが、いかがでしょうか。

 ただ、当たり前ですが、別に破綻があるとかそんなことではありません。敢えて言えば、ストーリーについては、極めて「薄味」風味ですね。

 例えば、そんなの比べる方が悪いと言われそうですが、泉鏡花の『天守物語』や『夜叉ヶ池』の、舞踏の文章+圧倒的カタストロフィー。
 いえ、やはりあんな希有な天才作と比べてはよくなかったかも知れませんね。無い物ねだりのつもりじゃないんですが。

 ともあれ、トータルな印象としては、科白の踊るが如きリズムと掛け合わせ、イメージするものは「青春戯曲」とでも言えそうな感じがします。
 鮮やかさと瑞々しさと、そして少々の青臭さ。
 確か倉田百三の『出家とその弟子』を読んだ時にもそんな風な感じがしましたが、或いは目指しているところは近いのかも知れません。

 そして実は、こんな青春を扱った「薄味」の戯曲こそ、珠玉作などといわれ、息の長い享受がなされるのかも知れません。
 もちろんそのことは、作品が極めて優れたものであることを、過不足なく語っているのであります。


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Last updated  2011.04.23 09:14:57
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