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2011.10.15
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カテゴリ:大正期・白樺派

  『愛慾・人間萬歳』武者小路実篤(角川文庫)

 三つの戯曲の入っている作品集です。
 総題の二作と、もう一つは『愛慾』の続編となる『ある画室の主』という戯曲です。というより、この『愛慾』という話は、続編がなければ何とも中途半端な作品に終わっている気がします。どう見ても二作はワンセットです。
 なぜ、続編という形で分けたのでしょうね。内容的には完全にひとつの話なんですが、つなげると長すぎると筆者は考えたのかも知れませんね。
 
 昔の作家って、というより、これは武者小路一流の、まー、やはり「わがまま」っぽい部分かも知れませんが、わりと「その時俺はこう思ったんだ」だけで、何でもぐいぐい押し切っていくような気が、しません?

 タイトルの付け方なんかにしても、武者小路氏は今回のものなんかが典型という気がするのですが、『人間萬歳』なんて、凄すぎません? 『365歩のマーチ』みたいな感じ、しません?
 ここまでいっちゃうと、「素朴」というより、何かやはり「わがまま」っぽいものを感じるのは私の偏見でしょうか。(そうかも知れません。)

 さて、冒頭『愛慾』から読んでいきましたが、えー、まー、これはいろんなところでいろんな人が同様のことをおっしゃっていますから、別に私のとんでもない読み違いではないと思いますが、なんともまー、「タルい」科白のやりとりです。
 こんな会話って存在するんだろうか、この時代にはこんなしゃべり方があったのだろうか、と思わせるような、およそリアリズムを感じさせない硬直した感じのやりとりです。

 そのうちこなれてくるのかな、あるいはこちらが慣れてくるのかな、と思いながら読んでいても、最後までこの会話のリアリティについては、違和感が残ったままに終わります。
 で、読み終えて気が付くんですね。
 この筆者は、そんな科白のリアリティなんかこの作品では追求していないのだ、と。

 確かに、以前武者小路の『その妹』を読んだ時は、筆者に似合わない(と勝手に私が思っているだけですが)切れ味のいいドラマツルギーと迫力を感じて、「この作家はこんなお話も作るんだー」と、少し感心しました。

 でも、「迫力」というなら、今回の作品にもそれは大いにあります。
 しかし、それは最後に述べたいと思います。その前に、なんとも評価のしづらい部分に触れておきたいと思います。

 今述べましたように、今回の作品にはほとんどドラマティックな仕掛けがありません。その代わりあるのは「説教」と「苦悩の表白」であります。
 レーゼ・ドラマというものがありますが、ほぼそれに近いような感じがします。
 この作品で筆者は、自らの美意識に基づく人間の行動倫理についてひたすら説いています。そしてその中に「美」が宿っていると理解しているように見えます。

 しかしわたくし思うのですが、それは結局小説とか戯曲とかいったものの「美」ではないのではないでしょうか、と。
 いえ、特に小説というのは、何をどう表現してもいいジャンルのものですからそういった作品の存在ももちろん考えられましょうが、ただそこには、主張の素晴らしさはあっても、表現されたものそのものからは「美」は表出してこないのではないでしょうか。
 だから、申し訳ないながら、私は本作は、作品としては「痩せている」と感じました。

 にもかかわらず、武者小路作品には、読み終えてむしろしばらくしてからふと、「安心感」の様なものを感じさせるものがある気がします。
 今回も特に『人間萬歳』なんかは、読み終えてすぐは、なんか馬鹿馬鹿しいような印象を持ってしまうのですが、しかし、内容をぼんやりと振り返っていくと、まるで古い大木の根っこの所に寄りかかって微睡んでいるような、ほっとする思いがあります。

 なるほど、かつてこんな風に考える作家がいたのだな、という軽い驚き。
 現在では、こんな「雑ぱく」な論理ではあれこれ凌ぎきれないだろうけれど、しかしこの底の抜けたような理想主義は、やはりどこか人を和ませる、という思い。
 確かに、間違いなくここには存在感があります。ちょうど、眼の前の様々な自然が、間違いなく存在しているように。

 武者小路実篤作品は、一種青春期の文学のようにいわれることがありますが(この理想主義がそう思わせるんでしょうね。「理想主義的な青春」。でも若い頃には、こんな理想主義はちょっと鼻について、馬鹿にしてしまうような気がするんですけれども)、むしろ年を取ってくるほどに、懐かしさと共に肌に蘇ってくるような気が、特に最近、私はいたします。
 いえ、優れた文学とは、本来そういったものであるのでしょうが。


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Last updated  2011.10.15 08:18:43
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