原作本を知らなくても、福山雅治と柴咲コウの「ガリレオ」を知っている人は多いでしょう。このところヒット曲に恵まれない福山さんが妙にぴったりきまっていて、相変わらず学芸会演技の柴崎さんもぶいぶいいわしておりました。最近は人気ドラマが映画化されるのがはやりのようで、まあ、当たり外れの大きい映画事業ですから、テレビで人気のあるドラマを映画化するのはそんなリスク回避には最適なのでしょう。安易と言えば安易で、最近、やたらと元気のある邦画が、これが元でまた沈んでいかなければいいがといらんお世話を焼いてしまいます。
『容疑者xの献身』はそんなガリレオ映画化の原作本です。元ホステスで今は弁当屋で働く女のところに、元の亭主がやってきてまたお金をせびります。しかし、娘のことでもみ合いになり殺してしまいます。途方に暮れる女、しかし、女に好意を寄せていた隣人の教師は、自ら偽装をかってでます。彼は数学の天才で、あらゆる事態をシュミレーションして完璧な偽装工作を行います。しかし、たった一人その偽装を見抜いた男がいました。そう、ガリレオ=湯川学です。
とにかくあらゆる分野で拍手喝采された傑作、直木賞受賞、このミス1位、ミステリ大賞受賞、著名な推理小説作家がこぞって絶賛した作品ですので、面白くないはずはありません。一部で、作者が意図的に読者に有利な情報を隠蔽しているとの批判もありますが、推理小説は所詮、読者と著者の騙し合いですので、そんなこと言う人は読まんでよろしい。最後の最後に明らかになるだいどんでん返しの驚愕を体験してください。また、この作品は推理小説だけとしてでなく、上質な恋愛小説としても読むことができます。素晴らしい作品です。
が、へそ曲がりの私としては、正直言って、あのオチには納得できんな。ここまで用意周到に策を張り巡らせたわりには、最後があまりにも安易すぎる。何が安易なのか書くとネタバレになるので遠回しに書くと、アレをあんな手段で用意する、というのがリスクが高く、その上、安易すぎると思います。もう少しひねって欲しかった。