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古民家再生 「斐川の家」改修完了
お話をいただいてから約1年。斐川の家の改修が完了した。 この住まいは、住みながらの改修で、まさしく関係者が一体となった 住まいづくりであった。 古民家再生は、松江の築百年の商家(旧門脇醤油)、小樽指定歴史的 建造物 遠藤又兵衛邸、出雲大社の家をはじめ、随分と数を重ねて きたが、斐川の家はまた別の趣のある設計であった。 今までの古民家と違い、増築と改築を積み重ねてきた建物をひとつに 統一する作業でもあった。母屋の一部が切り取られ、新たに増築され ている部分があったが、天井を取り除くと、幾何学的アクロバット的 小屋組があらわれ、額に汗が出る場面もあった。せっかくの小屋梁が 大きくえぐり取られたところがあるなど、すさまじい工事の痕跡であ った。 現場監督と大工の棟梁(とうりょう)は、「取り替えましょう!」と 迫ってきた。こういう場合は常識的に取り替える?なぜ?という思い を感じた。私は、今までの設計作業の中で、絶えず真のテーマを見い 出してきた。「概念としての新築」であったり、「建築とは、現代の 文化の上に立つ価値ある建物」とう概念であったりと、建築家として の私を納得させてくれる根本的理念がなければ設計は出来ない。 斐川の家で思い至ったのは、これらの痕跡は、むしろその家の歴史で あり、当時の家主や棟梁の仕出かしをも包含した空間であるべきであ るとの思いであった。 この家の歴史が今日であり姿である。そうであるならば、梁に打たれ た5寸釘も邪魔にならなければ残そう。切り裂きも極力そのままにし ておこうと考えた。小屋組みは改めて古色で塗った。増改築を繰り返 してきた小屋組みは、統一的な古色によって、いよいよ一体の空間と なった。 今までは省みられなかった増改築の隙間空間。屋根を残し、部屋をえ ぐり中庭空間として広げた。そこには土蔵があり、その漆喰(しっく い)の壁は確かにこの家の歴史を伝えてくれる。 おそらく出雲平野では初めての試みであろう。外に開かれた家が多い 中に中庭(コート)を配したまさしくコートハウスが出現した。 クライアント(施主)の意向でもあるが、外目からはそのような空間 が内包されているとは誰も気づかないであろう。 「斐川の家」もまた思い出の一作となった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/07/08 03:57:42 PM
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