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2005年03月14日
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カテゴリ:連載小説

 家事の一部をロボットに分担させてから、アリサには自由にできる時間が増えた。そのため必然的に、アリサと翔太が一緒に過ごす時間が長くなった。

「翔太さん、この前借りていた本返しますね。」
「おう、どうだった?」
「どの話も面白かったです。そうだったんだぁって唸らせるような仕掛けがしてあって。」
「やっぱりこの作家は短編が上手いよね。驚くような工夫がされていて、その上感動させられてしまう。」
「一番好きなのは、二番目に載ってる話です。最後の一行が凄くいいですね。」
「あの、『僕は、そう信じている。』ってやつね。」

 最近アリサは、翔太の好きなものに興味を持ち始めた。音楽とか、小説とか。よく翔太の部屋に来ては、翔太から本を借りたり、翔太と一緒に音楽を聴いたりしていた。

「また、何か良い本貸してくれませんか?最近だんだん読むペースも速くなってきたんですよ。」
「おう。どれが良いかな。」

 アリサは、データ化された文章は一瞬で記憶することができるのにも関わらず、小説を一文字一文字目で追って読んでいる。
 読みながら記憶するのはデータを保存するのとは違い、意味を理解しながら文字を読み進めていくことで、自分の心でいろいろなことを感じ取ることができる。
 本をデータとして記録するのではなく、読むということにより、アリサは感受性を高めているのだった。

 翔太は自分の蔵書の中から、アリサに合いそうな本を探した。といっても、前までならある程度意味のわかりやすい本を選んでいたが、今ではアリサは、普通の人と同じように本を読めるようになった。

「これなんかどうだろう。」
 翔太は本棚から、少し前に読んだ青春ものの本を取り出した。
「けっこう感動させられるんだよ。」
「ありがとう御座います。お借りしますね。」

 翔太から本を受け取り部屋を出て行くアリサを見ながら、翔太は自分に言い聞かせた。
 アリサはロボットだ。人間に近いし、人間と何ら変わりは無いけれど、ロボットだと。

 話をするということに関しては、アリサはもう普通の人間と何ら変わり無かった。知識が豊富で、観察力も高いため、翔太の良い話相手となっていた。
 最近、翔太はそんなアリサと話をしていて、アリサがロボットだということを忘れる瞬間があった。
 アリサはロボットとは言っても、実際にはほとんど人間と変わらなくなってきているので、それでも何の問題も無いはずであった。

 しかし、翔太は、時々彼女がロボットであるということを自分自身に言い聞かせた。
 そうやって繰返し自分に言い聞かせなくては、アリサがロボットだということを忘れてしまいそうな気がする。
 翔太は、なぜかそのことが怖かったのだ。


つづく





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最終更新日  2005年03月14日 18時31分48秒
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