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2005年03月19日
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カテゴリ:連載小説

「私、ブランコに乗るの初めてです。」
 アリサはそう言ってブランコに座り、漕ぎ始めた。アリサの両手はしっかりとブランコのチェーンを掴み、絶妙な体重移動でブランコを加速させていく。
「初めてにしては上手いな。」
「はい、頭ではブランコの動きがわかっていますから。体重移動さえ上手くできれば、素早い動きも必要ありませんし。」
 そう言ってアリサは、さらにブランコを加速させていく。もっと高く、もっと高くとブランコを漕ぐ子供のように、その顔は輝いていた。

「実際にブランコに乗ってみて、どんな気分?」
「ブランコ気持ちいいです。すごい。頭の中で想像しているだけとは全然違います。景色が速いです。」
 そう言って楽しそうに漕ぎつづけるアリサを見て、翔太も子供の頃に返ったようにワクワクしてきた。
 翔太もアリサの隣のブランコに乗って、勢いをつけて漕ぎ始めた。久しぶりに乗るブランコは、確かにアリサの言う通り景色が速く動いて楽しかった。

「よし、靴飛ばししよう。」
「靴飛ばし、ってなんですか?」
「こうやってブランコを漕いで、靴を飛ばすんだ。遠くまで飛ばせた方が勝ち。ちょうど人も居ないし、やってみよう。」
 そう言って翔太は、片方の靴をすぐに脱げる状態にしてから思いっきりブランコを漕いだ。
 そして、靴を飛ばす。
 放物線を描いて飛んでいった靴は、砂場を越えてシーソーのあたりに落ちた。
「よっしゃ、新記録だ。」
「新記録?今まではどこが記録だったんですか?」
「今までは、砂場の真中辺が最高。・・といっても、小学校の頃の話だけど。」

 翔太は靴飛ばしをしていた頃のことを思い出した。その頃は同じクラスの友達と、よくこの公園で遊んでいた。

「・・アリサも飛ばしてみなよ。」
「私もですか?・・やってもいいですけど、すごく飛びますよ?」
「すごくって、どのくらい?」
 アリサはブランコを漕ぐのをやめて、一瞬フリーズした。きっと頭の中でコンピューターが回っているのだろう。

 計算結果はすぐに出たらしく、アリサはかなり遠い辺りを眺めて言った。
「この風なら、あの花屋の少し手前まで届きます。」
 花屋は、公園を出て道路を挟んだ向こう側にあった。翔太の飛ばした位置より何倍も距離がある。
「・・そんなに?」
「はい。計算上は。」
「それは、ちょっと危ないから無理だな。」
 それほど遠くまで飛ぶ靴を見てみたい気もするけれど、さすがに危なすぎるだろう。人に当たっては大変なことだ。
「そうですよね。危ないですよね・・・。」
 そう言って少し残念そうな顔をしたアリサは、すぐに何かを思いついたようにぱっと明るい顔になった。

「あ、それじゃあ、翔太さんが飛ばした靴に当ててもいいですか?」


つづく





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最終更新日  2005年03月19日 13時23分12秒
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