カテゴリ:連載小説
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翔太とアリサは、靴をはいてベンチに腰掛けた。 「太陽、隠れちゃったな。」 翔太は空を見て言った。気が付くと空には雲が多くなってきている。 「今日はこの後、だんだん天気が悪くなるみたいです。」 空を眺めながらそう言ったアリサを見て、翔太は尋ねた。 「・・・アリサは天気予報もできるのか?」 「違いますよ。今日の朝、テレビで天気予報を見ました。」 「ああ、なんだ。ビックリした。」 そう言って、二人は笑い合った。 さっきまでは人のほとんど居なかった公園に、数人の子供達がやってきて、楽しそうに騒いでいる。どうやら何かゲームを始めるみたいで、真中でじゃんけんをして鬼を決めている。 アリサはそれを眺めて、何か考えているようだった。 「それじゃあ、そろそろ帰ろうか?」 翔太がそう言うと、アリサは無言で下を向いた。帰りたくないのかな、と翔太は思った。 「・・どうした?」 「あの、翔太さんに話があるんですけど。」 「・・何?」 アリサのあらたまった態度に翔太は、まさか告白でもされるのではないかと身構えた。 しかし、そうではなかった。アリサは意を決したように言った。 「翔太さん、学校に行ってみませんか?」 また予想外のことを言われた翔太は、すぐに言葉を返すことができなかった。 「学校に行った方が翔太さんのために良いと思います。」 追い討ちをかけるようにそう言ったアリサは、いつものように翔太のことを真っ直ぐに見つめて、翔太の返事を待った。 「いまさら学校になんて行けないよ。・・別に俺は、学校に行かなくてもいいさ。」 翔太の言葉に、アリサは悲しそうな顔をした。そんな顔をしないで欲しいと翔太は思った。 「前に読んだ本に書いてあったことです。『生きるとは呼吸することではない。行動することだ。』と。」 ルソーの言葉だそうです、と言ってから、アリサは大きく息を吸うような仕草をした。そして、まるで体のうちから湧き出てくる言葉を吐き出すように、アリサは一気に話し始めた。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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