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2005年03月26日
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カテゴリ:連載小説

 翔太は髪の毛を拭きながら、隣に座るアリサに聞いた。

「何やってたんだよ。雨の中に立ったまま居るなんて。」
「・・なんだか、雨に打たれたい気分だったんです。」
 まるで人間みたいなことを言う。いや、アリサの心は人間と何ら変わりは無いのだ。そういう気分になることもあるだろうな、と翔太は思った。
「それで、雨に打たれてどんな気分だった?」
「・・なんだか、情けなくなりました。」
「そうか・・・人間らしい、自然な感想だな。」
 翔太のその言葉に、アリサは今にも泣きだしそうな顔をした。きっと、泣きそうなほどに嬉しいのだろう。
 涙が出ることは無いけれど。

「翔太さん、私のこと探してくれたんですか?」
「・・ああ。帰りが遅いから、心配したよ。」
「・・ありがとう御座います。・・嬉しいです。」

 翔太は、バスタオルで髪を拭きながら言った。
「アリサ、ちょっと聞いてくれ。」
 翔太の真剣な声に、アリサは翔太の方を見た。

「お前はロボットで、俺は人間だ。だからアリサの気持ちに答えることはできない。」
 翔太はアリサの方は見ずにぶっきらぼうな感じで言った。
「・・けど、アリサは、俺にとって大切な家族なんだ。」
 だから、心配かけるな。と翔太は言った。

 翔太は、自分の言葉に恥ずかしくなった。アリサはロボットだ。それを家族だなんて。
 しかし、そう言われて喜んでいるアリサを見て、翔太は自分も嬉しい気持ちになっていることを感じていた。
「嬉しいです。私、嬉しいです。」
 アリサは両手で顔を覆った。
 ロボットだから涙なんて出ないのに、そう思った次の瞬間、アリサの顔を横目で見ていた翔太は、自分の目を疑った。

 アリサの頬を、涙の雫が伝ったのだ。

「アリサ、お前・・」
「あれ、私どうしたんだろう。目から水滴が溢れてきます。あれれ、どうしたんだろう。」
 アリサは何度拭っても溢れてくる涙に戸惑っていた。
「翔太さん、私どうしたんでしょう。・・・私、涙が・・。あれれ。」
 いくら感情が人間に近くても、ロボットが涙を流すなんて・・。そんなことが起これば、まさに奇跡だった。

 しかし、確かにアリサの両目から、涙の雫が溢れてきていた。涙を流す聖母マリア像のように、アリサの身に奇跡が起きているのだろうか。
「まさか、私が人間になりたいって思ったから?だから体も人間らしくなってきたの・・?」
「そんな・・・あっ!」

 いや、やっぱり奇跡なんかじゃないのだ。翔太は、アリサの涙の原因に思い当たった。

「どうしよう。それはきっと涙じゃなくて・・・」





 ピィーーーーーー・・・・
 エラー。エラー。

 アリサから電子的な音が響いた。
 そして、アリサは動きを停止した・・。



つづく





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最終更新日  2005年03月26日 12時50分23秒
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