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2005年03月27日
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カテゴリ:連載小説

<10>

 雨水が体内に入ったアリサは、エラーを起こして壊れてしまった。

「それで、アリサは直るの?」
 パソコンの中の父親に向かって翔太は聞いた。アリサは修理のために、翔太の父親が居る研究所に送られたのだ。
「浸水した部分は新しいパーツを入れるよ。記憶も壊れているけど、毎日こっちに送られてきていたデータから復元できる。」
「そうか、直るんだね。・・良かった。」
「ただ、壊れた当日の記憶はもう元には戻らないな。いや、残念だなあ。雨に打たれる気分が消えてしまったのは。」
「雨に打たれたい気分にはならないようにしなくちゃ。その度にアリサは壊れてしまう。」
「いや、それは防水を強化することでカバーするよ。・・・ところで、アリサの恋する気持ちなんだけど。記憶を修復する時に恋心だけは消すことも可能だと思う。・・・どうする?」
「そう。・・・うん。消してあげて。人間に恋する気持ちなんて無い方がいい。」
「そうかあ、それももったいないんだけどなあ。」
 翔太の父親は、本当に残念そうな声を出した。

 翔太は、父親に言おうと思っていたことを、一つ深呼吸をしてから言った。
「父さん、今度はいつ帰って来れる?」
 そんな言葉、簡単に言ってしまえることなのに、翔太の心臓は自分でも呆れてしまうほどに高鳴っていた。
「ん、今やってるプロジェクトの進行具合によるけど、来月には少し暇ができるかな。」
「・・・じゃあさ、来月の俺の誕生日に、帰って来れないかな。」

 自分から行動しなくてはならない。気持ちも、言葉にしなければ伝わらない。翔太はアリサから言われたことを思い出して、勇気を振り絞った。
 翔太のドキドキはさらに強くなっていた。自分の誕生日なんて父親は覚えていないだろうが、もしかしたらちょうど休みが取れるかもしれない。そんな期待を翔太は持っていた。
「わかった。14日だったな。確かなことは言えないけど、帰れるように頑張ってみるよ。」
 14日、父親がそう言った。誕生日を覚えていてくれたのだ。
 それだけで翔太は、とても嬉しくなってしまった。
「まあ、帰って来られないなら、無理しなくていいよ。」
 自然とトーンの高くなった翔太の声に、ディスプレイの中の父親は笑顔を返した。


つづく





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最終更新日  2005年03月27日 04時16分32秒
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