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カテゴリ:株式投資
先月末、ちょっと気になる記事があったので、
・3/20:A&Iの今期、大型案件中止で最大32億円弱の特損計上へ ・4/01:A&I最終赤字 前期、大型案件中止で特損 調べてみようかと短信をパラパラと読んでいたのですが、 良く分かりませんね。 A&I(4773)は、IBMと富士ソフトABCが作った情報システム会社ですが、 IBMの息が強くかかっているようです。 経営陣の略歴を見ても良く分かりますし、 売上の約3割をIBMに依存しています。 今回の特損は、大型案件中止による棚卸資産評価損22億32百万円を計上し、 これにより1億1600万円の債務超過に陥るというものです。 時価総額約46億円、H16年度の売上高143億円、営業利益6億円、 という規模を考えると、とてつもない損失計上です。 3Q決算までは、受注が堅調で、商品案件の利益率向上や、 SI事業での生産性向上とプロジェクト管理の徹底で利益も拡大、 というIRを出していましたが。 中止する見通しとなった顧客情報管理システム構築案件は、 2005年3月から構築作業が始まった、となっていますが、 棚卸資産の推移を見てみると、 <連:棚卸資産(百万円)> 平成15年12月31日 1,032 平成16年03月31日 1,234 平成16年06月30日 1,562 平成16年09月30日 1,320 平成16年12月31日 3,902 平成17年03月31日 5,412 平成17年06月30日 7,052 平成17年09月30日 6,847 ※1 平成17年12月31日 6,962 注記事項 ※1 仲介斡旋取引にかかる棚卸資産保有額は3,417百万円。 となっており、ある時期から激増しています。 H17年中間期に初めて注記が記載されました。 (後述の会計ルール変更によるもの?) 他の指標も同様に増加していれば、それほど問題ないのですが、 下記のような感じです。 短期借入金は急増してますが・・・ <売上高、売上原価(百万円)> 平成16年9月 売上高 6,505 売上原価 5,742 平成17年3月 売上高 7,840 売上原価 6,866 平成17年9月 売上高 7,430 売上原価 6,509 <受注(百万円)> 平成16年04月01日 ソリューションサービス事業 5,257 ~09月30日 システム開発サービス事業 1,141 平成16年10月01日 ソリューションサービス事業 5,976 ~17年03月31日 システム開発サービス事業 1,078 平成17年04月01日 ソリューションサービス事業 6,750 ~09月30日 システム開発サービス事業 1,475 <受注残(百万円)> 平成16年09月30日 ソリューションサービス事業 901 システム開発サービス事業 321 平成17年03月31日 ソリューションサービス事業 573 システム開発サービス事業 249 平成17年09月30日 ソリューションサービス事業 1,215 システム開発サービス事業 462 分かり難くしているのが、 IT(情報技術)関連企業を対象とした、 売上高水増し防ぐ会計ルールの変更です。 仲介的なシステム開発取引および仲介的な商品販売取引について、 「手数料分のみ」を売上計上するという内容。 昨年中間期よりこの売上高の計上方法の変更があり、 売上高を使った比率が単純に推移で使えないのに加え、 A&Iはセグメント区分も変更したため、 事業サービス毎の売上/営業利益の推移も同様に 連続性が無くなってしまっており、 このため、補足されている修正前回分との比較しかできません。 3/20に「特別損失のお知らせ」という形で、 最大31.9億円の特別損失が発生するというIRを出して株価は急落し、 その後3/31に業績下方修正を出しました。 最大31.9億円が22.3億円になったので、 9.6億円を別企業に負担してもらったということです。 (顧客かプロジェクト協業企業か。 またはハード機器であれば、別案件に振り分けれたか) またこれとは別に、 大型SIプロジェクトの見積り誤りによる追加機器納入で、 特別損失4億83百万円も計上します。 22.3億円に比べれば、4.8億円は小さく見えますが、 4.8億円の利益を上げようとすると、利益率5%として、 96億円の売上を上げる必要があります。 A&Iの場合、これだけで半年以上タダ働きする必要があります。 なぜ、こんなことが起こってしまったのでしょうか。 これだけの大規模なプロジェクトであれば、 チェックも相当厳しかったはず、と普通は考えます。 普通は・・・ A&Iの短信の事業等のリスク欄には、赤字プロジェクトの発生として、 『一括請負契約による受託においては、受注時には利益が計画されるプロジェクトであっても、予期し得ない理由により、当初見積以上に作業工数が発生することによって、コストオーバーランが発生したり、納品が遅延し、損害賠償の請求を受ける可能性があります。また、これにより訴訟を含めた係争に発展する可能性もあります。 当社では、サービス品質をさらに向上し、赤字プロジェクトの発生を未然に防止するため、受注時の見積段階からリスク要因のレビュー等による見積精度の向上とリスク管理の徹底を図るとともに、プロジェクトマネジメントスキルの向上と、当社独自の開発方法論の活用推進、CMMI(Capability Maturity Model Integration)の推進等、品質管理体制の拡充、強化に努めております。しかしながら、赤字プロジェクトが発生した場合には、業績に影響を与える場合があります。』 と記載されています。 どのSIベンダーでもありそうな内容で、特におかしな点はありません。 こうしたリスク管理が適正に行われていたのであれば、 これほど大きな損失を出すようなリスクを負うことはなかったはずです。 問題は、このプロジェクトの契約先がどこになっているか、 そして、A&Iは仲介的な立場だったのかどうか、だと思います。 つまりプライム(元請)の開発案件だっかのかどうか。 もしプライム案件で顧客と直接、請負契約をしていた場合、 今回のようなことは通常考えられません。 通常はフェーズ毎の契約にするはずです。 そして1フェーズでこれだけの損失が出るはずはありません。 (始まったのが昨年3月で、 今年に入ってから技術的な面で取引先から合意が得られず中断、 ということなので、昨年は要件定義&設計&開発を行い、 実装した段階でレスポンス等の技術的な問題が発生し、 こじれてしまったのでしょう。 元々の見積り規模が分かりませんが、 最低でも設計フェーズまでで一旦契約を切っておかないと リスク管理になりません) しかし、例えばもし、頭にIBMがいた場合、 ちょっと話が変わってくる可能性があります。 A&Iの主要ポストは、当然IBMからの出向者でしょうし、 新代表取締役社長もIBMからの転籍組みです。 IBMはそのネームバリューで仕事を取ってきて、 ピンハネして手下の情報システム会社にほぼ丸投げするわけですが、 A&Iのような立場の企業は、無茶な話でも大抵は受け入れざるをえません。 仕事をもらう立場では、大株主の声を、 鶴の一声を断れない場合があります。 そういうリスクを回避するためかどうか、 A&Iも、IBMからの仕事の比率を年々下げていますけど。 (どこでもそうですが、「子会社のリスク」というものには 投資家は注意しなければいけません。 子会社には投資しないという投資家もいるくらいですから) しかしそれだけで、 今回の損失を説明するのはちょっと無理があるでしょう。 そうすると・・・ と、いろいろ邪推してしまいますね。 IRに問い合わせても、どこまで答えてくれるかは分かりませんが、 もう少しいろいろ調べれば、 IRに突っ込めるところも出てくるのかもしれません。 やはり何となくヤバイというのは分かっても、 外部から財務諸表だけで見破るのは困難ですね。 当事者でもどの段階で把握できたか疑問ですし。 SIベンダーの厳格でない売上計上も、 だんだんと見直されていくでしょうが、 どこまでいってもリスク管理を徹底するしかないことには 変わりありません。 受託開発のあいまいな売上計上を排除、ソフト取引の会計処理が2007年度から厳格化 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006/04/10 08:49:21 PM
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