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テーマ:ミステリはお好き?(1431)
カテゴリ:Mystery
------------------ ★ 作者は巻頭で大胆にも読者に宣言する。 『この小説のメイントリックは、双生児を利用したものです 何故前もってトリックを明らかにしておくかというと、昔から、推理小説にはタブーに似たものがありたとえばノックスの「探偵小説十戎」の十番目に、「双生児を使った替え玉トリックは、予め読者に知らせておかなければ、アンフェアである」と書いてあるからです。』 *** その一卵性双生児はある犯罪を計画し実行に移した。 「世間のやつらがいけないんだ。だから復讐してやる」 * 都内で連続強盗事件が起きた。目撃者の証言により犯人の面体はわかっているのだが、被疑者の男は双子であった。兄か弟、何れの犯行なのかの判別がつかないまま捜査陣は翻弄される。 六名の男女に届けられた差出人不明の北国の山荘への招待状。 しかし招きに応じた彼らの到着後、山荘は交通が途絶し、外部との連絡手段も断たれてしまう。 そして雪密室と化した空間で起こる連続殺人事件。 クリスティーの「そして誰もいなくなった」に倣う如く、六人の命は一人また一人と消えてゆく。 二つの事件にはどのように繋がっているのか。交わるはずのない双曲線は何処に帰着するのだろうか。 ------------------- 1972年の作なのに時を経てなお色あせない名作だと思った。 犯行動機など、むしろ今どきの社会現象に通じるものがありはしないか。 何よりも「ノックスの十戒」と「そして誰も」へのオマージュが本格ものファンには嬉しい。 双子による犯罪の模様、事件を追う刑事たちの警察小説的な捜査の過程、雪の山荘のクローズドサークルでの連続殺人の惨劇、いずれの描写もサスペンス一杯の面白さ。 双子宣言によって、読者にヒントを与えていると見せかけてミスリードする、これこそ作者のトリックになっているという二重の仕掛けが見抜ける者がどれだけいるだろう。 叙述トリックを疑ったり、招待客の中に双子が隠れているのかと考えたりと、顔のない死体と雪の上の足跡のトリックのあわせ技ときては、私も大いに惑わされた。 そんな五里霧中の謎が解かれる推理過程の伏線回収もぬかりなく、強盗事件の巻き添えで罪もない女子小学生が犠牲になったエピソードが最後に明かされる、ラストへは感慨深い。 西村先生お見事です。 「名探偵シリーズ」も全部読んでみよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.10.07 20:47:03
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