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テーマ:ミステリはお好き?(1432)
カテゴリ:Mystery
真敷市公民館創立20周年に開催されたマジックショー。
アマチュア奇術サークルマジキクラブは、11のマジックを披露した。 奇術に使用する薬品の瓶をひっくり返したり、鳩が死んでしまったり、ハプニングやアクシデントの挙句どうにかフィナーレを迎えたが、仕掛けから飛び出すはずの水田志摩子は姿を現さなかった。 いつの間にか会場を抜け出した彼女は自宅マンションで撲殺されていた。 その遺体の周りには、奇術小説「11枚のとらんぷ」に登場する手品の小道具が壊されたうえで散乱していた。 事件の謎を解く鍵は「11枚のとらんぷ」に秘められている。 「11枚のとらんぷ」の作者であるマジキクラブ座長鹿川瞬平は自らの著書を手がかりに真相解明に乗り出す。 いつ、何のために志摩子は公民館からマンションへ戻ったのか、何故殺されなければならなかったのか、そして誰が彼女を。 いや、何よりもショーの出演者の中に犯人はいる...... -------------------- 泡坂妻夫の長編第一作目にして、泡坂ミステリーの魅力のの全てがある逸品。 なんて野暮な口上は無用。 奇術の舞台とともに進行するストーリーのスリルとユーモア、巧みなマジックに驚くような意外性を見せる展開を堪能すれば良い。 といってもミステリーとしてのロジックを考察するのが疎かになっても困るが。 推理のための伏線、これもしかつめらしい事件捜査の過程は作中殆ど描かれず、作中作の中に事件解明の手掛かりが隠されという凝った趣向。 奇術の種明かしを鮮やかに披露されたような終幕の謎解きまで。まさにフィナーレまで楽しめる奇術ショーのように読ませてくれる。 ラストにしても探偵役はトリックの種明かしをするだけ、犯人逮捕の役目はないといことを示唆しているようで気が利いている。 何だかカーテンコールでもう一度幕が上がったら拍手を贈りたいような印象深い幕引きの結構。 数多の奇術ショウーを観るような気持ちで、様々な泡坂作品が読みたくなる。 いや読まずにはいられない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.10.23 20:26:57
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