|
テーマ:ミステリはお好き?(1431)
カテゴリ:Mystery
昭和41年夏。 とある地方都市で起きた毒殺事件。 名門楡家の当主楡伊一郎の法要の席上、亜ヒ酸によって長女の澤子と、伊一郎の長男の息子である9歳の芳雄が殺害された。澤子のコーヒーカップと芳雄の食べたチョコレートから毒物が検出され、犯人は楡家の人々のうちの誰かに違いないと思われた。 警察が捜査を進めるうちに有力容疑者と見做されていた男が出頭して犯行を自供した。 平成20年冬。 無期懲役から仮出所したその男から、楡一族でただひとり生き残った女は手紙を受け取る。 「私は犯人ではない、そしてあなたは犯人を知っている」 -------------------- 何やらリアルの世界で既視感のあるヒ素毒殺事件と「毒入りチョコレート事件」を巡って、男女の間で交わされる書簡の中で展開される推理。 元弁護士でありながら虚偽の自白をし、殺人犯として服役した男と、被害者家族でありミステリー好きの女。二人はかつて愛し合っていた。 ミステリーずれした読者ならこの設定だけでトリックや、犯人の輪郭はなんとなく浮かんでくるはずだ。犯人の予想がついてもなお、丁々発止の巧みな語り口の二人の書簡は、読み手の興味をラストまで失わせることがない。 次はどうくるのか? 多重解決もののごとく、二転三転する推理の様相に心奪われ、そのたびに新たに指摘される「新犯人像」刮目せずにはいられない。 にもかかわらず、物語の結構はただ一人の犯人を示すのだが..... と、思わせておいて、最後にぬかりなく用意していた陥穽に読み手を落とし込む。 如何にも読みやすく、わかりやすい描き方をしながら、一筋縄ではいかないミスリードの巧妙さは、元弁護士である作者の真骨頂だろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.10.29 20:42:19
コメント(0) | コメントを書く
[Mystery] カテゴリの最新記事
|