楽天市場
紹介文
漂着した南の島での生活。自然の試練にさらされ、自然と一体化する至福の感情。それは、まるで地上を離れて高い空の上の成層圏で暮らすようなものだった。暑い、さわやかな成層圏。やがて、夢のむこうへの新しい出発が訪れる―青年の脱文明、孤絶の生活への無意識の願望を美しい小説に描き上げた長篇デビュー作。
中公文庫【1000円以上送料無料】夏の朝の成層圏/池澤夏樹
やっぱりいいですねー。
何が好きってこの空気感。
三人称のせいか漂流とか無人島とか、結構差し迫ったことを書いているのに突き放した感じというか、解説の表現を借りるなら「リアリティの欠如」。
文章の感覚は確かに村上春樹に似ていると思うのだけれど、難解な村上作品に比べて池澤作品は理路整然としていて清々しいのがいい。
村上作品が言葉は簡単なのに、すりガラスごしに絡まった毛糸を見るようなもやっと感が残ってワタシのキャパを大幅に超えるのに対して池澤作品はどんなに複雑に見えてもピタゴラスイッチのようにひとつひとつクリアしてちゃんとスッキリさせてくれるんですよねー。
そこが数学的というか。
例え「解なし」でもどうして答えがないのかちゃんと解析してくれる親切さ、ステキです。
漂流して生き延びたことを他の人に君は英雄だ、と言われて「単なる運、大変な量の幸運だけど、やはり運です。僕と同じ目にあって、どこにもながれつかずに溺死したたくさんの人々に精神力がなかったと言うことはできない」という主人公の静かな主張はいいなと思います。
好みです。
何度も読みたい池澤ワールドです。
そういえば登録しっぱなしだったのを思い出しました(照)
よろしければポチっと☆