紹介文
東京郊外の弁当工場にて、主婦たちは深夜パートの作業をこなしていた。香取雅子42歳はリストラ亭主と家庭崩壊、吾妻ヨシエ51歳は認知症の姑の介護、城之内邦子40歳はカードローンや街金の多重債務、山本弥生30歳はギャンブル狂の亭主から受ける暴力と、それぞれ4人は悩みを抱えていた。そんな中、弥生は夫がマイホームの頭金にしていた貯金をバカラ賭博で使い果たしたことに激高し殺害してしまう。雅子は弥生の窮地を救うためにヨシエと邦子を引き込み死体をバラバラにしたうえでゴミ集積場に分散投棄し証拠隠滅を図るが、一部を邦子が公園に捨てたことで露見する。
警察の捜査が行き詰まりを見せる一方で、有力容疑者として逮捕された地下カジノのオーナー・佐竹は興信所を使い弥生の周辺を探り始め、借金の棒引きと引き換えに邦子から事件の全貌を聞き出した街金のチンピラ・十文字は死体隠滅の仕事を雅子に持ちかけるなど、雅子たちの日常は確実に毀れはじめていた。
OUT 上 (講談社文庫) [ 桐野 夏生 ]
先日映画は観たので原作もってことで読んでみました。
映画はなんとなく中途半端なブラックコメディな感じでしたが小説はやはり桐野作品らしく、
暗ーく、生々しく血の匂いなんかむっとしてきそうな湿度の高い仕上がりでした。
小説の映画化ではよくあることですがこの作品も映画と小説は全く別物ですね。
登場人物の設定もずいぶん変わってるし。
旦那を殺してしまう弥生は2児の母ではなく妊娠中に設定を変えてしまったのは意味があるんでしょうかね?
事件の後佐竹の指図で家に入り込んでスパイをした女のエピソードなんかまるっとすっ飛ばしたかったから?
映画では殺人の濡れ衣を着せられた佐竹の復讐とシンプルに描かれてたけど小説ではそうじゃなくて(それもあるけど)佐竹の倒錯した性癖というか愛情というかとそれにシンクロして覚醒しちゃう雅子というところがメインイベントだったんじゃないかと。
それでも雅子は生きていく!っていうラストは強く陰りのある女(そして言葉使いがとても悪い)誕生!というとても桐野作品的でした。
このあと雅子がどうなったのかもとっても気になるところ。