木の枝に止まるあなたに出会ったとき、

フクロウかと思ったよ。

白い花咲くリンゴの木の向こう、ツリーハウスの右下の、
石窯小屋の屋根を超えてそびえる木の枝が、彼女の止り木。

私がしゃがんで卑屈に呼ぶと、木の枝を駆け下りて威風堂々こちらへ向かってきてくれたから、
抱きしめられないまでも、せめて触れられるかしらと希望に胸がときめいた次の瞬間、

私には感じられないモノの気配を気取（けど）ったあなたは、

振り向きもせず、きっぱりとそちらの方へ立ち去りました。

「猫との付き合い」と「恋愛」は、異にして異ならず。

翌朝六時、私の心から執着が消えたころに扉の前へ「ニャア」とやって来て、

媚びずに呼ぶその澄んだ声に、外に飛び出す愚かな私（笑）

三部牧場＆ツリーハウス界隈で最強、翠玉の瞳の淑女の名前は「アオちゃん」。

猫なのに、馬みたいな名前です。

きっと、「ばんえい競馬」の味方に違いありません（笑）

ハルニレの木を愛する三部さんをして、
ハルニレの木で爪を研ぐアオちゃんを微笑んで眺めています。

そうそう、アオちゃんの曲線を描くお腹のあたり、オメデタでございます。

去年、牛舎の屋根裏から牛の間に落ちてきて、牧場で働く優しいお姉さんに助けられた子猫が、
もうお母さんになるなんて、猫の時空の巡りのなんと早いこと。

何かに集中しているアオちゃんの背中、私の目には朝の日差ししか見えないよ。

猫の耳のうしろに降りそそぐ日差しには、幸せが宿ります。

アオちゃん、ごめん。

「乳搾りとバター作り体験」の時間まであと５分しかないから、準備しなくちゃ。

彼女に瞳で「根性なし。」となじられてしまいました（苦笑）

あとで三部さんに訊ねたら、アオちゃんをツリーハウスの中に入れても良かったそうです。

なーんだ、そうだったのかぁ、次回また遊ぼうね、アオちゃん。

安産と、子猫たちの幸福を祈りつつ。

あ、そうだ、四国で獣医さんをしてる高校のときの同級生に自分を「アオ」と呼ぶコがいてね、
「どうして、アオちゃんなの？」って聞いたら、可愛い声で「馬が好きだから。」と答えました。
彼女と何も話さずに、風に吹かれて大きな馬を眺めていたいなぁ、と時々思います。