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カテゴリ:ピンクの象
今日は『10min.ボックス(国語)』から... … ある晩、象は象小屋で、ふらふら倒れて地べた に座り、わらも食べずに、十一日の月を見て、 「もう、さようなら、 サンタマリア。」と、こう言った。 「おや、なんだって? さよならだ?」 月がにわかに象にきく。 「ええ、さよならです。 サンタマリア。」 「なんだい、なりばかり大きくて、からっきし意気地の ないやつだなあ。仲間へ手紙を書いたらいいや。」 月が笑ってこう言った。 「お筆も紙もありませんよう。」象はほそういきれいな 声で、しくしくしくしく泣き出した。 「そら、これでしょう。」 すぐ眼の前で、可愛い子どもの声がした。 象が頭を上げて見ると、赤い着物の童子が立って、 硯と紙を捧げていた。 … 宮沢賢治『オツベルと象』(第五日曜)から 純真無垢な白象が、オツベルという人間に いいように遣われ、 衰弱しきって初めて怨むことを知り、 仲間に助けを求めます。 ことさらに悪辣冷酷なオツベルと、まるで対照的に “お人よし”─お象よし?─な白象が描かれています。 馬は手綱と“あぶみ”の加減でヒトの意のままに走り、 山羊が急な山道を、ラクダが砂漠を荷を背に載せて 運び、牛は鋤を引いて田を耕したり、… なんでこんなに黙々とヒトに尽くすんだろうと、 動物たちの従順さを不思議に思うことがあります。 そして、そんな“お人よし”な動物につけ込むオツベルの したたかさは、自分の中にもあるような気がするんです。 この物語は、人間と動物の間にできあがった、 このような関係の縮図なのかも知れません。 写真は、POS I, ムンジャガン島、バリBarat国立公園 〔インドネシア〕 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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