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2015.06.27
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八朔の雪 &花散らしの雨・高田 郁


♤ みをつくし料理帖シリーズ・高田 郁(たかだ かおる)
・ハルキ文庫(発行者:角川春樹)


☆1.八朔の雪
・2009年5月18日 第一刷発行

幼馴染の、貧しい塗師の娘「澪」と、高麗橋通りに店を構える大店の娘「野江」。新町廊ゆかりの遊女たちが大切にしている「足洗いの井戸(花の井)」に、澪が誤って下駄を落としてしまった。青くなる澪に、野江は「怒られるんも、罰が当たるんも一緒屋」といい、自分の下駄を投げ入れた。
遊女の引き舟にこんこんと諭されている野江を見た途端、高名な易者、東西の顔色が変わった。野江は「まさに天下取り。太閤はんにも勝る『旭日昇天』の相や」という。そして、澪の顔と左右の掌を見た易者は『雲外蒼天』の相だといい「可哀そうやがお前はんの人生には苦労が絶えんやろ。これからさき艱難辛苦が降り注ぐのは避けられない。けれど、その苦労に耐えて精進を重ねれば、他の誰も拝めない様な真っ青な澄んだ空を拝むことが出来る」と告げた。

享和2年(1802年)7月1日、長雨で淀川が決壊、澪と野江の住む界隈では多くの死者が出た。淡路屋は店ごと流され誰も助からなかったとも、またお助け小屋にいた野江を親戚の人が引き取ったという噂もあった。
8才の澪は塗師だった父親(伊助)に背負われて逃げる途中、母(わか)もろとも濁流に飲み込まれた。一人だけだけが生き残りふらふらと町を彷徨っていた澪は「天満一兆庵」の女将(芳)に救われ奉公することになった。最初は女衆として奉公した筈が、澪の天性の味覚を見出した店主(嘉兵衛)に言われて板場に入るようになって五年、これから本格的な修行をという矢先に、天満一兆庵が隣家からの貰い火で焼失してしまった。
大阪の本店が火事で焼け店主の嘉兵衛は急死。女将の芳は澪と共に、江戸店を預かる息子の佐兵衛を頼るも、既に店は人手に渡り、若旦那の佐兵衛は行方不明になっていた。

芳と二人、長屋に身を寄せ合う様に住む澪は、神田御台所町の蕎麦屋「つる家」の主人(種市)と出会い、店で働かせてもらう様になっていた。澪が作る上方料理屋の味はなかなか江戸の客には受け入れてもらえなかった。天性の味覚と負けん気で日々研鑽を重ねて生み出した澪の料理は、やがて江戸の人々に受け入れられ、賞賛される様になって行った。
有名な料理屋の登龍楼に、味を盗まれたり、つけ火され「つる家」は全焼した。

吉原のおいらん「あさひ太夫」は、上方の懐かしい料理を頼みに来た又次に「雲外蒼天」とのみ書かれた文と共に十両もの大金を包んだ袱紗包を託した。
あさひ太夫が野江だと知った澪は、長屋の人達にも助けられ、年明け早々焼け跡に粕汁の屋台を出した。「酒粕汁」と名付けた澪の粕汁は初日から大繁盛となり、食材をかき集め松の内まで売り続けたところ大評判となった。
そんな澪の姿を見た種市は、火事のあと寝込んでいたが、元飯田町俎橋の近くに「つる家」を再建すると告げた。

♧主な登場人物
♣︎澪(みお)

♣︎芳(よし)
元は大阪でも名の知れた料理屋「一兆庵」の女将。澪と共に長屋暮らし。

♣︎野江(吉原「扇屋」の遊女、あさひ太夫)
類い稀な美貌を持ち、旭日昇天の相があると言われた。
元は、大阪高麗橋通りに店を構え、珍しい到来品などを扱う大店「淡路屋「の末娘。澪の幼馴染。

♣︎又次
あさひ太夫が信頼する、翁屋の料理人(賄い料理が中心)

♣︎種市
神田明神町の蕎麦屋「つる家」の主人。一人娘つるの墓参りの帰り、荒れ果てた稲荷神社の雑草を黙々と引いている、娘に似た澪を見かけた。

♣︎永田源斉(ながたげんさい)
神田旅籠町に住む医師。父、永田陶斉は御典医。

♣︎小松原=つる家の馴染みの客
「土圭の間の小野寺」と名乗るところを、偶然澪は聞いてしまったが、正体は不明。

♣︎伊佐三、おりょう夫婦=長屋の隣人、太一=火事で親を亡くし、伊佐三、おりょう夫婦にもらわれた。

花のライン


☆2.花散らしの雨
・2009年10月18日 第一刷発行

元は神田明神町に在ったつる家は、付け火で焼失し、屋台店を経て、初午にこの地に移ったばかり。今度の店は一階が入れ込み、2階には小部屋が三つあり、周辺の侍がこっそり忍んで食べにくるのに重宝された。
種市、芳、おりょうだけでは手が足りず、口入れ屋からの売り込みで、下足番の小女を住み込みで雇うことにした。やって来た娘は名を「ふき」と言い13才。澪は幼い頃の自分と重ね合わせて不憫に思い可愛がっていた。

ところが、ふきがやって来てから、澪が吟味を重ねて考案した「春の精進揚げ」と「三つ葉づくし」を、相次いで登龍楼が先に売り出したのだ。
朝早く訪れた澪に、口入れ屋は、悪びれずふきの身の上を話した。元は料理人だった父親が騙されて莫大な借金を背負い、その金を奉公先が肩代わりしてくれたものの、父親はその金を返そうと無理をして早死にしてしまった。心労から相次いで母親も死に、ふきは乳飲み子だった弟と共に借金を肩代わりしてくれた店に引き取られ、借金を返し終わるまで奉公を強いられることになったという。ふきはその料理屋が紹介して来たのだという。日本橋に在って、前身は煮売りやだったという料理屋・・・。「…登龍楼」澪が呟くと、口入れ屋がはっと顔色を変えた。澪は腹わたが煮え繰り返るような感情に耐え、俎橋の袂で泣いていたふきの心情を想い、心を決めた。

三つ葉づくしの膳を食べ終えた清右衛門は、澪に「猿真似に怪我に付け火、か。散々な目に遭うておるな」と言い、更に「煮売り屋から名字帯刀までを許されるまでにのし上がった、采女宗馬はそんな下手な真似をしまい。采女の機嫌を取るために、下の物が仕出かしたことだろう」と話した。客のいない座敷に男の声が、店中によく通った。
清右衛門を送り出し調理場に戻った澪に、種市は「今の客、物言いが何処となく小松原さまに似ちゃいまいか?」と言った。
清右衛門の話を聞いたふきは「澪姉さん、ごめんなさい」と言うと、勝手口から飛び出して行った。

ふきの行き先を追い、登龍楼の勝手口に立った澪の耳に平手打ちの音が聞こえた。飛び込んだ澪は「采女宗馬を呼びなはれ」と叫んだ。板場衆に羽交い締めにされながら、更に「恥を知りなはれ、采女宗馬。・・・」と捲し立てた。澪の話を聞き、事情を察した宗馬は、板長の末松に「二度と登龍楼の敷居を跨ぐことは許さん」と命じた。
ふきに「弟に会いに来るのはかまわない。しかし奉公は許されますまい」と告げた。去り際に、澪に「小野寺さまとはどのような知り合いだね?」と問うた。「存じません」と答えた澪に、ぞっとするような冷徹な目をむけ立ち去った。

俎橋の袂で、大きな徳利を後生大事に抱きしめた若い男が倒れていた。酒と思った野次馬を機転で追い払い店へ入れた。男の持っていたのは、相模屋の店主紋次郎が精進を重ねて作り出した特上の「流山の白味醂」だった。芳が書いた上方の料理屋への紹介状を胸に、留吉は、恩返しに澪の「こぼれ梅(味醂の絞り粕)」を約して帰って行った。

清右衛門から、花見の時には素人女も吉原見物を許されるのだと聞き、澪は「野江に会えるかもしれない」と思った。野江が生きていること、その正体が「あさひ太夫」であることはは、周囲の誰にも打ち明けていなかった。
折しも、料理を頼みにやって来た又次はあさひ太夫が怪我をしたと告げた。
澪はあさひ太夫がいる翁屋の楼主、伝右衛門が源斉の患者だったを思い出し、源斉の住む表店に駆け込んだ。これまでの全てを告げ、あさひ太夫の様子を知りたいと乞う澪に「翁屋にとってあさひ太夫はただの遊女ではなく、生き神とも守り神とも思われているようです」とだけ話した。
そんな折り、留吉が白味醂と約束の「こぼれ梅(絞り粕)」を持って訪ねて来た。
澪は「この季節なら吉原へ入れるから、なんぞ手立てがあるのと違うやろか」という芳の言葉を背に、野江に食べさせたい一心で「こぼれ梅」を胸に吉原へ向かった。

爽やかな胡瓜と柔らかく茹でた蛸を合わせた酢のものは「夏の蛸なんざ食うもんじゃねぇ」と言っていた江戸っ子も「ありえねぇほど旨ぇ」といい、客は勝手に「ありえねぇ」呼び好評だった。ところが、2階座敷の武士たちは、一様に酢の物には一切箸をつけなかった。

久し振りにつる家に姿を見せた小松原が「蛸と胡瓜の辛子酢みそ和え」を、目尻に皺を寄せて美味しそうに食べる様子に、澪はたとえようもない幸せを感じた。そして生姜とキスが苦手だという小野寺の言葉に、澪は笑いが止まらなかった。そして、武士が胡瓜を食べないのは、切り口が葵の御紋に似ているからだと教えてくれた。

後半、澪を恋仇と思い込んだ、源斉を慕う伊勢屋のひとり娘「美緒」も登場して、いよいよストーリーは新たな方向に進展する気配・・・。


♣︎清右衛門
口は悪いが、澪の料理を気に入って度々つる家を訪れる、江戸では名の知れた戯作者。

♣︎采女宗馬
登龍楼の店主。

♣︎留吉
流山、白味醂の製造元、相模屋の使用人。

♣︎美緒
日本橋本両替町、伊勢屋久兵衛のひとり娘

♧巻末付録「澪の料理帖」に掲載されている料理
・ほろにが蕗ご飯
・金柑の蜜煮
・なめらか葛饅頭
・忍び瓜





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Last updated  2015.06.28 22:00:48
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