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2015.08.24
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出世花・高田 郁

☆出世花(しゅっせばな)・高田 郁
・角川春樹事務所、2011年5月18日 第一刷発行

(2008年6月、祥伝社文庫より刊行された作品に、若干の加筆・修正の上、新版として刊行されたもの。作者のデビュー作)

久世藩の藩士、矢萩源九郎は、幼い娘の艶を連れ妻仇討ち(めがたきうち)の旅に出た。寛政5年(1793年)、飢え凌ぎに誤って毒草を食べてしまった二人は行き倒れとなる。下落合にある青泉寺の住職に助けられたが、源九郎は住職に艶を託し死んだ。助かった艶は、住職から「縁」と言う名をもらい、新たな人生を歩むことになった。青泉寺は死者を弔う「墓寺」であった。真摯に死者を弔う人々の姿に心打たれた縁は、自らも湯灌場を手伝うようになった。

4年の歳月が経ち、9歳で清泉寺に来た縁は、寛政9年(1797年)のこの年、13才となっていた。
縁の利発さを見抜いた内藤新宿の菓子商、桜花堂の店主佐平と後妻のお香から、縁を養女にしたいと申し出でが有った。縁は、申し分のない話を断り、寺に残りたいと言う。住職の正真に「お前が何を考え何を望んだのか、お二人に隠さず話すがいい」と促され、お縁は話し出した。母のこと、父のこと。父が亡くなった時に見た湯灌のこと…… 。そして、「死人を洗うなど、身の毛がよだつ」と受け取られていることに衝撃をうけたこと… 。
震える声で、お香は「お父上と母上の名前を聞かせておくれでないか?」と問うた。「父は、矢萩源九郎。母は、登勢と申しました」という返事を聞き、お香は意識を失って倒れてしまった。その日を境に、佐平・お香夫婦と、お縁の縁はぷっつり切れた。

いつの頃からか、風に乗って次のような噂話が聞かれるようになった。
江戸は下落合村に青泉寺という名の寺があり、そこには「三昧聖」と呼ばれる娘がいる。三昧聖の手にかかると、病みやつれた死人は元気な頃の姿を取り戻し、若い女の死人は化粧を施されて美しさで輝くようになる。三昧聖の湯灌を受けた者は、皆、安らかに浄土に旅立って行くのだ、と。

お縁は、15の年から湯灌を任されるようになり、3年の月日がたっていた。湯灌記録を綴っていることを知った、同心、窪田主水は「無冤錄述」と言う、検視のための手引き書を貸してくれた。毒草や毒薬の知識を深めていた縁は、時には、定廻り同心の新藤から意見を聞かれるほどになっていた。

ある日、正念とお縁が遠出の湯灌から戻ると、寺門の外に2挺の駕籠が待機していた。待っていた老人は、正念を「若」と呼び、生母のお咲きの方様が危篤のよし、伝えに参りましたという。「早う私と共に」といい、手を伸ばして腕を取る老人に、正念は「仏門に入った時より俗世との縁は断ち切っておりますゆえ」といい、その場を立ち去った。翌朝訪ねて来た、正念の異父妹と名乗る、あや女の「生きているうちに、母を見舞って欲しい」と言う願いにも、態度は変わらなかった。見送りに出たお縁に、あや女は「兄は、母のことを心の底から憎んでいるのに相違ありません…」といい、帰って行った。
やがて、お咲きの方が亡くなり、菩提寺を通じて、あや女からお縁に湯灌の依頼が来た。敬愛して止まない正念の、余りにも普段の姿と違う態度… 。「きっと何か訳が有るはず… 」と思ったお縁は、湯灌に同行して欲しいと正念を説き伏せた。

遺族が見守る中、お縁と正念の手で湯灌が済み、お縁は死化粧を終えた新仏に一礼して後ろに下がった。その場に居合わせた人々が引き寄せられるように亡骸を取り囲んだ。新仏は、まるで何か楽しい夢でも見ているのかのごとく、口角を上げ、微笑んで眠っているようだった。その表情に、もはや病苦の痕はない。
仏の夫である多聞が、正念に向かい「毘沙門にお願いがございます。副葬の品として、亡き妻の好きな母子草を棺に入れ、お浄土に持たせてやりとうございます。毘沙門手ずから手折りし母子草ならば、必ずや亡き妻もお浄土まで持参できるはず。…… 」といい、 あや女共々、玉砂利に額を押し付けた。正念はじっと考えたあと、寺の一角の陽だまりに群れている御形(おぎょう=母子草)を手折り、自らの手で新仏の手に持たせて、棺を閉じた。
正念は一足先に帰り、お縁は、借りた紅を返そうと、ひと気の無くなった湯灌場で一人待っていた。遺族が骨揚げまで待つ小さなお堂に誘った多聞は、娘のあや女とお縁に向かい、正念が出家するに至った事情を話しはじめた。

☆主な登場人物

♣︎縁   
幼名は「艶」、のち「縁」〜「正縁」。父は久居藩下級武士の矢萩源九郎、母は登勢。母は、男を作って家を出た。妻仇討ちの放浪の果てに父が頓死。青泉寺で育ち、三昧聖となる。

♣︎正真
下落合にある墓寺、青泉寺の住職。高潔な人格者。

♣︎正念
青泉寺の修行僧。元は武家の出で、出家に至る複雑で哀しい過去を持つ。

♣︎香
内藤新宿の菓子商「桜花堂」の店主・佐平の後妻。





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Last updated  2015.09.07 10:21:04
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