カテゴリ:本
☆不祥事・池井戸潤 ・実業の日本社 ・Jノベル・コレクション、2014年4月10日/初版第1刷発行 ( 単行本、2004年8月 実業の日本社刊 ) 日本テレビ系でドラマ化された「花咲舞は黙ってない!」の原作。TVドラマは「不祥事」の他『銀行総務特命』『銀行狐』『銀行仕置人』『仇敵』シリーズなどの短編がとりいれられている(Wikipedia参照) ♣︎主な登場人物 ・相馬 健 東京第一銀行事務部相談役。かつては優秀な融資係として名を馳せたが、栄転先の副支店長とぶつかったことから目の敵にされ、次の転勤では意に添わぬ営業課に回されたという屈辱の過去を持つ。 あれから5年、東京駅前にある東京第一銀行10階にある相馬のデスクからは、八重洲側の街並みが見える。出世競争からは落ちこぼれたが、念願叶って本部調査役の椅子に座った相馬の胸には晴れやかな気分が広がっていた。相馬の肩書きは、詳しくいうと事務部事務管理グループ調査役。営業課の事務処理に問題を抱える支店を個別に指導し、解決に導くのが主な仕事。 ・花咲 舞 3ヶ月前まで代々木支店で相馬の部下だった女子行員。 相馬に言わせると「上司を上司とも思わないどうしようもないはねっ返りで、絶えずひやひやさせられた」とのこと。 事務部部長の辛島伸二郎に言わせると「臨店指導で女子行員たちの意見をもっと聞き出せる体制を作るために選抜されたエリートテラー」だという。 ・真藤 毅 東京第一銀行 企画部長兼執行役員。将来の頭取候補。 1.激選区(自由ヶ丘支店の巻) 事務過誤が頻発している自由ヶ丘支店で三千万円の誤払いが起きた。犯人は盗み出した通帳と印鑑を使い現金を引き出した。窓口で応対した内村薫が、払出請求書に記載された住所が間違っていたことに気が付かなかった事務ミスが原因だという。通常は必ず免許証の提示を求める筈のベテランの彼女が、その日に限ってそれを怠り健康保険証だったというミスも重なった。 ベテラン女子行員が次々と退職した理由を問いただした舞に、薫の上司である中西課長は「大した仕事もしていないベテランは、余計なコストがかかるだけだ」と答えた。 閉店直後の営業室での、薫の水際だった仕事ぶりを見るにつけ、舞には彼女が誤払いなどというミスをおこすとは思えなかった。 もしかしたら、彼女は中西課長にもその判断ミスの責任を負わせることで、銀行に一矢を報いようとした・・・。それがこの誤払いの真相ではないのか。内村薫が本当に戦っているものが何なのか、そのことに気がついたとき、舞ははじめて彼女の態度を理解できた気がした・・・。 2.三番窓口(神戸支店の巻) 奔放なバーの女に溺れ愛人にした一流企業のサラリーマン。やがて妻に知られるところとなり、別れ話を切り出した途端、女の情夫は法外な慰謝料を要求してきた。銀行に申し込んでいたローンは既に否認されており、3000万円となるとサラ金からも簡単に借りられるものではない。これは銀行でも襲うしかないか-----自嘲気味にそんな冗談を思い浮かべてみた男の胸に、ある考えが浮かんだ・・・。仲間選びさえ間違わなければ、あとはそう難しいことではない。頭の中でおおよその概略が出来上がったとき、男の気持ちは既に固まっていた。男の名は紀本肇。自らの勤務先の銀行を使っての綱渡りのような企てだったが、上手くすれば仲間それぞれに3000万円が転がり込む。彼が周到に企てた筈の、送金のタイムラグを悪用しようとした詐欺は、店頭に座った舞に見抜かれ、脆くも潰えた・・・。 「金田さん、こちらへお連れしてください。その方、紀本副支店長のお友達のようですから」その時、逃げようとした一味の男の腕を掴んだフロア案内の男性に呼びかける舞の声がした。 3.腐魚 東京第一銀行 役員応接室で、真藤毅は深々と腰を折り、愛想笑いを浮かべていた。相手は、業界の雄と言われる老舗の伊丹百貨店のオーナー社長、伊丹清吾。伊丹百貨店は、現在赤坂駅近くに新しく開発した土地に、支店を含む三億円を超える一大プロジェクトを計画していた。そのプロジェクトの主力銀行に何が何でもなりたい真藤と、資金調達を有利に進めたい伊丹の駆け引きの真っ最中だった。 (新宿支店の巻) 次の臨店先の新宿支店は、事務量が半端ではない多さと、予想外の退職者が出たための極端なオーバーワークが続いた結果、事務ミスが続いていた。新宿支店は、伊丹百貨店社長の長男、伊丹清一郎の勤務地でもあった。 その清一郎が個人的な逆恨みから、彼が融資を担当している幸田産業を倒産に追い込もうとしたのだ。不審に思った相馬と舞の調べにより、清一郎が独断で稟議書を上に上げず放置したことが原因だと判明、東京第一銀行だけでなく他行からの融資を受けようにも間に合わない。このままだと幸田産業は5000万円近い不渡りを出し倒産は免れない・・・。必死に資金調達して来たであろう幸田が5000万円を持って時間ギリギリに駆け込んできた。 ひとまず倒産は免れたと皆が思ったそのとき、それまで全く連絡が取れなかった伊丹清一郎が裏口からひょっこりと入って来たのだ。呼びとめる声も無視してそのまま階段を上ろうとする清一郎の腕を掴むと、舞は強引に引っ張った。「幸田さんの稟議を出したかって聞いてるの。当行は融資を見送る場合も支店長決済がいる。そのくらい、君だって知っているでしょう」「なに固いこといっているんですか。そんなこといっていたらうちらの仕事、回らなく---」清一郎の頬が鳴り、言葉は途中で途切れた。騒ぎを聞きつけて駆けつけた羽田融資課長に向かって、心強い味方を得たとばかりにぱっと顔を輝かせ「か、課長、聞いてくださいよ。この人--」といいかけた伊丹の顔面を羽田の拳がとらえた。信じられないものでも見ている目で見上げる清一郎を睨みつけてから、羽田は幸田に詫び「お許しいただけるなら今からでも当行で支援させていただきたいのですが・・・」と、応接室へ案内して行った。 羽田の後ろ姿を見送りながら、相馬が舞をつついた。「ほらみろ。こんなアホ御曹司にかき回されるほど、うちはおちぶれちゃいないだろ。腐っても鯛だ」 4.主任検査官(武蔵小杉支店の巻) 武蔵小杉支店への臨店予定日と金融庁の検査が重なった。理不尽な札付き検査官をやっつけた話。 5.荒磯の子 伊丹百貨店の伊丹社長が、突然真藤を訪ねて来た。息子が課長に殴られ、取引先の前で本部から来た人間に侮辱されたことへの抗議に来たのだった。平身低頭で30分間謝り続けた真藤の怒りの矛先は臨店チームに向かう。 (蒲田支店の巻) そんな真藤と、理由はどうあれ紀本副支店長を破滅させたことを苦々しく思う男たちが、相馬との臨店チームに仕返しをしてやろうと企んだ。臨店ではなく、多忙な蒲田支店の欠員補充のためという名目で2人を送り込んだのだ。 ところが皮肉なことに、舞に根を上げさせようと罠を仕掛けた筈が易々とクリアされ、逆に舞の有能さを思い知らされる結果となった。開設屋にまんまと手形帳と小切手帳を騙し取られるところを、相馬と舞の働きで救われたのだ。 (開設屋=銀行を騙して当座預金を開設し、入手した手形や小切手帳と一緒に転売してしまう連中のこと。詐欺師の一種) 6.過払い(原宿支店の巻) 入行10年目のベテランテラーの中島聡子が100万円の過払いをしてしまった。当初は単純なミスかと思われた。疑問に思って彼女の口座の出入金明細を調べた舞は、幾つかの発見をした。そこに、3ヶ月前から始まった信じられない数字の動きを発見したのだった。堅実で聡明で誠実な人という印象の彼女を、何が狂わせたのか・・・。 7.彼岸花 真藤のところに真っ赤な彼岸花の花束が届いた。差出人の名前は川野直秀。元東京第一銀行の行員だった彼は早期退職したあと自殺していた。一体 誰が何のために送ってきたのか・・・。 8.不祥事 伊丹百貨店の全従業員、約9000人分の給与データが紛失した。それはまさに、東京第一銀行の信頼を根底から揺るがす、前代未聞の不祥事といってよかった。行員たちの必死の捜索にも関わらず見つからなかったそれが、渋谷駅構内で発見された。紛失した時のままの黒いボックスに入れられて渋谷駅構内にあるゴミ箱の上に放置されていたという。 紛失した日に営業第二部を訪問した来客をピックアップしていた舞の指がノートの真ん中辺りで止まった。のぞき込んだ相馬は「はあ?」という素っ頓狂な声を上げた。そこには思いもかけない清一郎の名前があったのだ。 ☆ノベルズ版あとがき・池井戸 潤 2004年8月に単行本の初版が出てから10年たち、作者ご本人が書いたあとがきが面白い。 ☆読み終わって・・・。 この作品は珍しくテレビドラマを先に見ました。現実にはこんなに上手くいく筈が無いと思いつつも、ドラマも小説も痛快でした(笑) 花咲舞の配役は杏さんをイメージして書いたのでは無いかと思えるほどドンピシャ! また、相馬調査役の上川隆也さん、真藤部長の生瀬勝久さんもぴったり! 本はあっという間に読み終わりましたが、あらすじと読後感の方がずっと時間がかかってしまいました f^_^;) 次回からはもっと簡略化しようと思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.03.29 15:27:44
コメント(0) | コメントを書く
[本] カテゴリの最新記事
|
|