|
カテゴリ:読後感あれこれ
![]() 20歳の知寿が居候することになった71歳・吟子さんの家。 駅が見える平屋での生活の中、知寿はキオスクで働き、恋をし、 吟子さんの恋にあてられ、少しずつ成長する。 二人に流れる四季を描き、選考委員絶賛の第136回芥川賞受賞作! (e-honより) ダンナが文藝春秋を買っているので、芥川賞や気になる記事のときは 私も読んでみる。 最近の芥川賞受賞作って、正直よくわからないものが多い。 『ハリガネムシ』 『蛇にピアス』は何とか、部分的に共感する箇所があり 少しは理解できたように思っているが。 若い人の小説を理解できないのは、私の感性の欠如なのだろうと思う。 選評を読んで、 「ふむ、そういうところが優れているのか。なるほど~」 (では、そこを気にとめて読み進まなくては) ・・・しかし、私の心は最後までピクリともせず(ガクリ) そんなことが多かったので、期待しないで読んでみた。 わりに読みやすかった。平易な文章が読み手を疲れさせない。 若い人の持つ、世間に対する理由の無い苛立ちとか、 母親としっくりいかない気まずさ、 恋人に対しても上手く自分を表現できず右往左往する内面、 どうしてよいかわからない中途半端な気分、居心地の悪さ、失敗、落ち込み・・・。 若いときの感受性がよく書き込まれていて、 自分も若い頃は、こんな思考回路だったような気がしてくる。 若い作家の小説が苦手な私に、そんな風に思わせるってことは 普遍性のある小説ではないだろうか。好感度○ 主人公は遠縁のおばあさんの家に間借りするのだが、 この老女はなかなか本心をつかませないので、最後まで老女の生きざまというか 本音の部分はよくわからない。 主役じゃないから、まあいいのだ。 老女の家を出て、寮に入ろうとする主人公との会話。 「外の世界って、厳しいんだろうね。あたしなんかすぐ落ちこぼれちゃうね」 「世界に外も中もないのよ。この世はひとつしかない」 この一言は、著者の力を感じさせる。 老女の名前は、荻野吟子という。 この名前を見て、渡辺淳一の『花埋み』を思い出して検索したら やっぱり同じだった。 日本ではじめて女医になった人の話で、もう何十年も昔に読んだ。 著者が、この本を知っていたか偶然か、ちょっぴり興味がある。 ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[読後感あれこれ] カテゴリの最新記事
|