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カテゴリ:社会・政治・時事
『日本人へ 危機からの脱出篇 』に続く第4弾。
文藝春秋2013年11月号から17年9月号に掲載された 塩野さんの、その時々に書かれた文章をまとめたもの。 およそ4年に渡る、日本や世界の出来事を振り返ることができる。 この期間に、日本も結構変わったけれど、 それ以上にイタリア、そしてヨーロッパは激変した。 本著で最も重要なキーワードは「移民」。 そして、やはり宗教の問題は大きい。 *** どうも日本人は、何もかも正面から受け止め、 正面からの攻撃で事態の打開を図ろうとする性向が強いように思う。 何となく、正眼にかまえてという感じで。 だが、戦術には、忍者の戦法もあるんですよ。 それがユーモアでありアイロニーである。 ユーモアで相手との間に距離を保ち、アイロニーで突くという戦法だ。(p.80) 「ユーモア」は、人の心を和ませるようなおかしみ。 上品で、笑いを誘うしゃれのこと。 「アイロニー」は、ソクラテスの問答法で、 無知を装いながら、知者を自認する相手と問答を重ね、 かえって相手が無知であることを露わにし、 その知識が見せかけのものでしかなかったことを悟らせるというもの。 確かに、日本の国会やマスコミの論調で、こういったものはほとんど見かけない。 使うや否や、「フザケルナ」と非難される場面も目に浮かぶ。 しかし、これらが適度に混入されれば、より多くの人の関心を引くことは間違いない。 実際、テレビ番組等で重用されているのは、この二つを駆使できる才能の持ち主なのだ。 *** 歴史に親しむ歳月を重ねるにつれて確信するようになったのは、 人間の文明度を計る規準は二つあり、 それは、人命の犠牲に対する敏感度と、 衛生に対する敏感度、であるということだった。 と同時にわかったのは、この敏感度が低い個人や国民のほうが強く、 負けるのは文明度の高い側で、勝つのは常に低い側、ということである。(p.186) 塩野さんは、ローマ帝国が滅んだ真の理由をここに見出す。 渡河中の溺死も、劣悪な環境下のテント暮らしも厭わず帝国内に押し寄せる蛮族。 その姿に、ローマの人々は絶望したのではないかと。 今、ヨーロッパに押し寄せる難民を、人々はどのようにとらえているのだろう。 本著を読み終え、すぐに『ローマ亡き後の地中海世界』を発注した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.11.26 11:28:06
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