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カテゴリ:社会・政治・時事
『言ってはいけない』の橘玲さんによる一冊。
本著では、脳科学の知見や心理学の実験結果が次々に紹介されていくので、 著者はその分野の専門家かと思ってしまいますが、作家さんのようです。 読み終えると、久々に付箋だらけの一冊が出来上がっていました。 *** わたしたちは自分をつねに「人並み以上」だと思っていて、 能力のない者が実力を大幅に過大評価する一方、 第一印象で相手を「平均的」と見なすため、 能力の高い者は(相手も同じくらいだろうと思って)自分の成績を過小評価し、 結果として、バカと利口が「熟議」すると悲惨なことになってしまうのだ。(p.66) これは「平均効果」について記された箇所。 著者は、このことが民主的な社会がうまくいかない不穏な理由であり、 SNS上での対立が、収拾のつかない混乱へと拡大していくことに繋がっているとしています。 まずは、ヒトはそういうふうに出来ているということを知っておくことが大切なのでしょう。 決定的なのは2003年、 自らも自尊心の重要性を信じていた心理学者のロイ・バウマイスターが、 自尊心と子どもの成長の関係を調べようと1万5000件もの研究をレビューし、 予想に反して「自尊心を養っても学業やキャリアが向上することはなく、 それ以外でもなんらポジティブな効果はない」という決定的な事実を発見したことだった。 他の研究者による検証でも同様の結果が出たことで、 現在では(すくなくともまともな)心理学者は 「自尊心を伸ばす教育が子供の成長に重要だ」と主張することはなくなった。(p.123) そうだったん……ですか? この件については、世間ではどの程度認知されているのでしょうか? 今でも、多くの教育現場では「自尊心を高めること」が良しとされているのでは? 「なんらポジティブな効果はない」は、かなり衝撃的です。 近年の脳科学のもっとも大きな発見のひとつは、脳には記憶が「保存」されていないことだ。 脳はビデオカメラのように、起きたことを正確に記録し、 いつでも再生できるようにしているわけではない。 脳にハードディスクが埋め込まれているのではなく、何らかの刺激を受けたとき、 そのつど記憶が新たに想起され、再構成される。 記憶はある種の「流れ」であり、思い出すたびに書き換えられているのだ。(p.257) この記述に関連する「トラウマ治療が生み出した冤罪の山」や 「トラウマとPTSDのやっかいな関係」等における事例には、本当にゾッとさせられました。 これについても、ヒトはそういうふうに出来ているということを知ったうえで、 色々と判断し、考え、行動していくことが大切になってくるのでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.02.12 11:27:48
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