カテゴリ:読書のココロ(小説)
基本、面白くなかった本のレビューは書かない主義なのですが
読後、ほんとうに「惜しい!!」と思った本が続きすぎて、消化不良を起こしそうなので ここでまとめて書かせていただきます 「愛がないなら黙して語るな」(だったか?) というのは、確か敬愛する三浦しをんさんの著書にあった名言だったと思いますが 愛ゆえの戯言、と読み流していただければ幸いです。 『チーム・バチスタの栄光』海堂尊 あらすじは、映画やドラマにもなっていて今更…なので省略。 キャラも立っていて、文章もよませる。 田口の立ち位置もよかったように思う。 でも後半から失速、 終盤で落下、という感じ。 前半(特に序盤)が面白かっただけに、もったいない。 (あ、桐生先生がkojiという配役はだと思いましたよ!>Umi♪さん!!) あと、コレは非常に個人的なことなのだけれど 組織モノはやっぱり読めないな、と思いました。 ある種の壁に阻まれて、物語の中に入り込めません 『食堂かたつむり』 小川糸 <あらすじ> 失恋でお金も家財道具も、そして声まで失った主人公が たった一つだけ残された祖母のぬか床を持って10年ぶりに田舎に帰郷。 自宅の敷地内でカラオケパブを営む、派手でどけちな母親に 愛豚・エルメスの世話を引き受けることを条件に庭の一角を借り、 1日1組限定の「食堂かたつむり」を開く。 やがてこの店で食事をすると恋が叶うという噂が流れ… なんというか、いわゆる「ロハス」的小説。 「食事とは、命を頂き、繋ぐこと」というメッセージが BGMのように物語の背後に流れています。 それ自体はとてもいいと思うし、大切なことだし、 物語全体の雰囲気も悪くないのだけれど、 どうも全体的に「ちぐはぐ」。 せっかく田舎ののんびりとしたところで営む食堂なのに 今風にいうと、「フードマイレージがかかりすぎ」。 裏の畑の野菜の皮や根まで大切にする割には、 外国産のコダワリの塩や油をつかってみたり、 ものを大切に、自然を慈しもう、というポリシーと まるで正反対のベクトルを共存させていることの矛盾に著者自身が気づいていない。 (そして「ロハス」ブームにハマるような読者もおそらくその矛盾を感じずに流される) その上、何と言ってもひっかかるのが著者の語彙の貧弱さ。 比喩のほとんどが 「まるで◯◯のようだった」 「ちょうどXXみたいな…」 のふた通りの表現しかなく、しかもそれがいいシーンに限って何度も何度も出てくる 初めて名前を見る作家なので、若い新人さんならそれも仕方ないか、と思ったら おっとどっこい! この人、作詞家だった・・・。 仮にも詩を書くプロがこの比喩って・・・・・ 終盤のエルメスの供養と母親からの手紙が泣ける程いいだけに この筆力のなさが惜しくて惜しくてたまらない。 あともうひとつ。 「水鉄砲」は、ありえない 『オテルモル』 栗田有起 【内容情報】(「BOOK」データベースより) 「悪夢は悪魔、どうかよい夢に恵まれますように」 毎夜、オテルモルには眠りを求めて人が集う。 しあわせな眠りを提供する不思議なホテル。 日常からほんの少し乖離した世界でもたらされる物語。 チェックイン…日没後; チェックアウト…日の出まで最高の眠りを提供するホテル… オテル・ド・モル・ドルモン・ビアンホテルのフロントで働き出した希里が知る、 優しい対峙の仕方。 (※ 以下ネタバレあり) 夢と現実が、半透明のビニールシートの表裏一体になっているような物語。 横歩きしなければ入れない程の狭い入り口、 地上なし、地下13階建て?のホテルなんて、絶対にあるわけがないのだけれど でもこの物語を読んでいると確かにどこかにありそうで、なさそうで、 でも「最良の夢を与えることに徹したホテル」というコンセプトが あまりに素晴らしくぴったりで、 安眠の提供に命をかけるプロフェッショナルな外山さんの存在が、 これまたこの現実離れした世界をぴたりとリアルな世界に繋げていて、 やっぱりどこかに、きっとこんなホテルがあるのだろうという気がしてきます。 そんなホテルで働く一方、主人公・希里のプライベートも描かれます。 クスリと激情型の性格で心身を病んだ希里の双子の妹。 その妹につきっきりで家を離れて暮らす両親。 妹の夫とその娘と3人で暮らす希里ですが 妹の夫は、実は希里の元カレという過去があったり、 妹がクスリ漬けになってしまった責任の一端を自分にも感じていたりして 希里はこの家で夜を過ごすことに息苦しさを感じ、 夕刻になると、逃げるように、ホテルの仕事に向かいます。 現実離れしたホテルの世界観というか雰囲気があまりにも完璧に近く、 反対に主人公の家庭の「こわれ」があまりにも現実離れしてしまっているために これまたどうも、このふたつの印象が噛み合ないなのです。 ホテルの話もプライベートの話も、それぞれ自体とても良く出来ているのに なんで一緒にしちゃったのかなあ?という印象。 どちらかに重点をおくか、 もしくは2編連作で、別々の話にして繋げたら、とてもよい話になったであろうのに…。 痛々しいエピソードに共感してくださいといわんばかりに描くのではなく、 事実をありのままに淡々と受け止めている主人公の姿勢もよかっただけに そのしっかり受け止めた現実が浮遊してしまうような印象が残念でした・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[読書のココロ(小説)] カテゴリの最新記事
|
|