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2010.03.10
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未来圏からの風
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
ヒマラヤ、アラスカ、バリ島を巡り、
ダライラマ、星野道夫、そしてアメリカの最先端科学者たちを訪ねる、池沢夏樹の旅。
【目次】
出発の前に/デリーからジスパへ/
ヒマラヤにて/ダライラマ猊下に聞く/
アラスカの雪/星野道夫さんに聞く/
紅葉のニューイングランド/フリーマン・ダイソン博士に聞く/
リン・マーグリス博士に聞く/トーマス・レイ博士に聞く/
さまざまなバリ/日本という国で





非常に興味深い対談集であり、旅行記である。

本書は15年前、筆者がTBSテレビの特番の取材&ロケの記録を
その非常に意義深い対談とともにエッセイを挟みこんでまとめたものだ。

さまざまな分野の第一線に立つ賢者たちに
これからの世界観についてインタビューしているのだが
いちばん興味深いことは、どの分野のひとたちも

「これからは、競争ではなく共生の時代」

「あらゆる生物の中で人間だけが特別例外的に優れたものという考え方は不自然」


と口を揃えることだ。




宗教界の第一人者も、
自然写真家も、
物理学や生物学の大家も、
コンピュータプログラムの中に「生命」を作り出した
人工生命の専門家も。




今でこそ,「共生」という言葉は
来るべき時代のキーワードのように扱われているけれど
15年前にこのような番組が作られているということは、
各分野の専門家たちはそれぞれにみなその10年程も前からその兆候をみていたということになる。
25年も前といえば、日本で言うとバブル前の時代。
あの頃から,どこか違う,何か違うと
一般市民でも冷静なひとたちはみな違和感を持ち続けていたはずで
でもそれを口にすると奇異な目で見られたものだ。


そして今。

本書を読むと、これらの言葉はまさに「未来圏からの風」だったのだな、と納得する。



 * * * * *


大事なのは,今の世界では互いに依存する面がどんどん大きくなっているので、
世界そのものは小さくなったということです。
もう自分の国のことだけ、自分の大陸のことだけを考えている時代は終わった。
世界をひとつのものと見てものを考える。
そうなれば、私たちの前には偉大な未来がある。私はそう信じています。


 - - -

だから、今では国と国だけでなく、大陸と大陸も互いに依存している。
こういう状況では独立した個人の利害というものはもうないのです。
私自身の利害は他の人々の利害の中に組み込まれている。
他人の利害が私の利害である。
友人が発展すればその益はあなたにも及ぶ。
隣国の経済がうまくゆかなければ,損失はあなたにまで及ぶ。
そういうものです。
すなわち、状況そのものが人間にはもっと調和の精神が、共に生きるという気持ちが必要だと教えているのです。
(中略)
つまり、この小さな青い星が私たちの唯一の家であり、
それ全体に関わる問題が存在する以上、我々は地球規模の責任感というものを発展させるしかないのです。
これが利他主義の基本ですよ。
利他主義というのは必ずしも自分の利を忘れるという意味ではないのです。



                 ( ダライラマ猊下 )


 * * * *


今,ヒトは地球全体に広がっている。
今までは各コミュニティ間にはだいぶ距離があったから、災厄を一地域に限定することも出来ました。
しかしこれがすっかり変わってしまって、我々は一緒にひとつの村に住んでいるようなものです。
交通や通信が速いから,何か災害が起こると地域全体に広まるおそれがある。
今の状態は危険だと私が思う理由がここにありますし、宇宙に出て行った方がいいと考える理由もここにあるのです。


 - - -

(太陽と地球の共生関係にふれて)

ダーウィン以前にはヒトは自分たちこそがすべての生物の頂点に立っていると考えていました。
ダーウィン以降は生存競争ばかりが人々の関心を集め,強調されてきました。
地球全体がまるで敵意に満ちた嫌な場所のように思われた。
それに対して共生とは、互いに生き延びるために互いを利用することです。
倫理にも適っている。
競争ではなく共生が生きる原理なのだと考えることで、
我々はようやく未来への展望を持つことが出来ると思います。




        ( 物理学者/フリーマン・ダイソン博士 )




 * * * * *



ここにこうして坐って周囲を見ていると、
自分たちが崇高で,自然を所有しているような気になります。
この思想は過去には有効でした。
これのおかげで我々の生活域は北極圏から熱帯まで広がりました。
しかし長い流れの中で見れば,我々等なんでもないのです。
(中略)
いかに傲慢に自分たちを高く評価しようと、
我々は微小要素からなる生物界の表現のひとつの新しい例でしかないでしょう。
そして、我々の無知は計り難い程深いのです。


 - - -


我々はどうしても自分たちが他よりも立派で重要だと思いたがる。
いかにも人間らしいことです。
しかし、我々の糞や尿を処理してくれる微生物がいなければ、
我々は自分の排泄物と毒ガスの中に溺れて窒息することになります。
糞や尿を作り出す生物はそれを処理する生物よりも重要でしょうか?
大事なのはこの両者からなるシステムの全体なのです。
多様性があって初めてシステムが作動する。
全ての生物は独立していると同時にまた他に依存してもいる。


 - - -


ネオ・ダーウィニズムの問題のひとつは,あまり意味のない言葉を乱用して、人々を惑わしたことにあると思います。
「適性」とか「競争」などというのはほとんど無意味な、計測しようのない言葉です。
それに生物学の算術というのは物理や科学の算術とはまるで違うものですから。
ひとつの例を挙げれば,通常の算術では一足す一は二ですが、
受精に際しては一足す一は一、一つの精子と一つの卵が一つの受精卵になる。
基本からして違うのです。


         ( 生物学者/リン・マーグリス博士 )




 * * * * 



ぼくは宗教なしで育ったから、その種の宗教的偏見を克服する必要もなかった。
ぼくにとっては、自分たちは特別な存在であると考える理由は何一つありませんでした。
自分たちはこの広大な宇宙の中にいる無数の生物の中から選ばれた存在であると見なす理由、
他の全てよりすぐれていると信じる理由は何一つない。
この宇宙には生命を宿す惑星がたくさんあって、そこには別のものを素材とする別の生命体がいて,
我々もそれらを含む多くの生命体の一つに過ぎない。
この考え方を否定することはますます困難になってきていると思います。
生命には様々な形があるというほうがずっと信じやすい。




             ( 生物学者/トーマス・レイ博士 )


 * * * * *








対談の他にも、
ヒマラヤの寺院での体験や
バリの人々の「変わらないための進化(変化)」など
興味を引かれる箇所が沢山あった。




この興味深い話を聞かせてくれた彼等の心には
いま、未来からどんな風が吹いているのだろうか。



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最終更新日  2010.03.11 13:54:14
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