カテゴリ:読書のココロ(エッセイ・その他)
【内容情報】(「BOOK」データベースより) 秋吉輝雄教授(聖書学)との対話。 「ぼくにとって宗教は知識だ。素人代表として、ぼくは碩学の門を叩いた」 その成り立ちから現代社会との関わりまで、 いま、人類最大のベストセラーを読みほどく。 【目次】(「BOOK」データベースより) 第1部 聖書とは何か? (聖書はなぜ今日まで残ったのか?/朗誦によって聖性が保たれた/ヘブライ語には過去形がない ほか) 第2部 ユダヤ人とは何者か? (ユダヤ人の定義とは?/ユダヤ人教師としてのイエス/世界宗教へと向かったキリスト教 ほか) 第3部 聖書と現代社会 (「六日戦争」に遭遇して/無時間の空間で対立するイスラエルとパレスチナ/軍備放棄の思想に共感した「ビールー団」 ほか すごく興味深くて面白い対談集でした。 最初は 「あの知識人の池澤さんが『素人代表』なんて いったいどんだけ専門的で小難しいことが書かれているんだろ?」 なんて心配してたんですが、 確かに難解な部分はあるものの、 それは私たち日本人にとって馴染みのない思想ゆえに難解なだけであって (アイデンティティの問題とか、 国境や個人を常に意識することで生まれる思想や言語とか) 言葉自体は平易にかかれており、 じっくりゆっくり読めました。 あまりの内容の充実ぶりに 比較的フォント大きめの270ページに1週間もかかってしまったけど でも一読の価値あり。お薦めの一冊です 本書は 池澤夏樹氏が従兄弟でパリ在住の聖書学の泰斗・秋吉輝雄氏との 何年にもわたる対談をまとめたもの。 聖書を宗教として掘り下げるのではなく、 学問として(テキストや文学として)学ぼうとしたときに生じる疑問について お二人がとてもわかりやすくナビゲートしてくれています。 私が一番目から鱗だったのは 「ヘブライ語には過去形がない」の抄。 聖書は元々はヘブライ語で書かれていて、それがギリシャ語に訳されたのち、 そのギリシャ語の聖書をもとに各国語に訳されていったので ギリシャ語には過去形があるから, もうその時点で聖書の世界観のとらえ方は大きく違ってしまっているということ。 これにはホントになるほど,納得でした。 「最初に天と地をつくられた」 のではなく、原文のまま忠実に訳すと、 世界は今も作られ続けているのです こういうふうに、ひとつひとつの事象(物語・逸話)を 時系列ではなくパラレルにとらえるのが 「ユダヤ人」(←この定義もとても丁寧に書かれています)の基本にある考え方で それがわかると今現在の、あのあたりの紛争も 「それはもう過去のこと」と水に流せないのがよくわかります。 もうこれは良い悪いの問題ではなく、一つの文化なのだなあ。。。。。 でもこれは、悪いことばかりでは決してなくて 対立したものを対立したままに並び置ける文化でもあって だからこそ、色々な立場でかかれた福音書が 矛盾はあってもそのまま現代まで残った、という功績もある、とか。 他にも 文字を数値に置き換えるヘブライ的習わしを無視して訳してしまったことによる 宗教観の変化や、ユダヤ教からの乖離、 「イスラエル」「ユダ」「マリア」という名前の持つ複数の意味、 『智恵の実』の智恵の意味、 (本能を捨て、動物とは違うと中途半端な知的能力で生きようとした結果) 「ユダの福音書」の存在を含めた原本からの取捨選択…等々。 ホントに興味深いこと山盛りでした。 私は聖書のことなんてほとんどまったくしらなかったけれど こういう風に知識のある方々に紐解いっていただくと ただ堅苦しくて綺麗ごとしかかかれていないのかと思われていた世界が また違った色をおびて輝いて見えるから不思議です。 本書の中で、例の「ダヴィンチ・コード」についても触れられていましたが ああいう風に興味本位に事例を繋げて仮説を立てるわけではなく、 長きにわたってその言葉に触れ続け、本来の意味を研究しつづけたひとの言葉なので 真実みも面白さも全くベツモノでした。 興味をもたれたかた、ぜひ読んでみて下さい お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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