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カテゴリ:未知との遭遇
結局、その日は夜になっても誰もゲストハウスには現れませんでした。こうなっては明朝誰も来なければ事務所に行って誰かを見つけるしか手はありません。 翌朝も朝食なしで事務所に向かいます。道には相変わらず誰もいません。 事務所の扉には鍵がかかっていませんでした。ホッとして中に入ると、目指す購買部長がデスクに座っていたので、思わずオーっと声を上げてしまいました。 購買部長への挨拶もそこそこに、私たちは丸一日全く食事に有りついていないので空腹で倒れそうである、と切々と訴えました。小太りのIさんはともかく、私はお腹と背中の皮がくっつきそうでした。 購買部長はレストランが閉まっていると聞いてびっくりして、レストランのオーナ-に連絡して直ぐに開けさせる、と言ってくれました。 さて、と言って購買部長は、ざっと現在の状況を説明してくれました。 反乱軍はほぼ鎮圧されたらしいが、まだ残党が残っている可能性があり、戒厳令は解除されたものの、夜間外出禁止は続いているらしい。まだ電話も通じない。 「確か君たちは明日出発する予定だったかな?」 「そうですが、代理店の者が迎えに来れるのか、連絡が取れないのでどうなるか分かりません」 彼は頷くと、 「今、車で移動するのはかなり危険だ。そこら中に検問があるらしいし、残党に襲われる危険が無いとは言えない」 じゃあ、どうすればいいんだ、という言葉が出かかったのを何とか抑えて、次の言葉を待ちます。 「君たちも知っての通り、ここで採れた鉄鉱石は列車で港町のブキャナンに運ばれる。その列車でここに住んでいる女子供を乗せて、隣国に避難させようという話が出ている。その列車はもう少し状況がはっきりしてくる明後日以降に出る予定なのだが、君たちが希望すれば乗ることは出来るがどうするかね」 思わずお互いの顔を見る。代理店にも本社にも連絡出来ないのであるから、ここに留まるよりは首都に近づいた方が得策かもしれない。何しろここは奥地も奥地なのだ。ブキャナンまで行けば首都まではどうとでもなる、かもしれない。 「では、我々二人もその列車でブキャナンまでお願いします」 「そこにはうちのゲストハウスがあるから、そこに泊まるといいだろう。着いた頃にはモンロビアとの電話も通じるだろうから、君たちの代理店とも連絡がつくはずだ」 先方の厚意に謝意を述べて、我々はゲストハウスに戻る。何はさて置いても食べ物に有りつかなくては、何か事が起きた時に咄嗟の行動が出来ない。 元々は危機意識の薄くのほほんとしている私ではありますが、この時は流石に頭のアンテナをくるくる回転させて、神経を張り詰めていたように思います。 何とかここから脱出できそうだな。 濃い霧が晴れてきたようです。 その時は突然やってきました。 7時頃歯を磨いているとIさんから、きょう午前中に列車が出るからしっかり準備しておけ、とのお達しを受け取りました。やっとです。購買部長と話してから3日が過ぎていました。 乗り込んだ列車には数えるほどの人数しかいませんでした。状況が好転してきたので、慌てて無理をする必要が無くなったからでしょう。4時間ほどの列車旅でしたが、途中何事もなく無事にブキャナンに到着すると、手配されたバンでゲストハウスに運ばれました。 Iさんは着くなり代理店に電話して、次の訪問国であるナイジェリアへのフライト予約を依頼するとともに、切った後すぐに日本本社の上司に連絡を入れます。 上司に今回の経緯を説明するとともに、今後のスケジュールを変更したい旨伝え、了解と現地商社に必要な手配を依頼しています。 話を横で聞いていて、新たなスケジュールはかなり混み入っており、隣国同士の関係が希薄な西アフリカでは横フライトの数は多くないのが普通で、綱渡りではないのか、というのが素人でも分かるものでした。 Iさん、ちょっと焦っているのかも。 次の訪問国のナイジェリアは、知る人ぞ知る恐怖の国なのです。 もし手配が上手くいかなければ、大変なことになるかもしれないな。 一難去ってまた一難です。まだ何も起こっていませんけど。 〈つづく〉 2つのブログランキングに参加しています。 ↓ポチッと押していただけたら嬉しいですありがとうございます にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.03.08 17:57:27
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