TＫさんは、バブル後の９０年代の東京のクラブシーンを支えた、この世界のドンの一人だったっす。

TＫさんは、まだ駆け出しだった俺を「ブンさんは日本一のＣＧアーティストですから」と、いろんなレコード会社に売り込んでくれた。
おかげで、俺は何人ものメジャータレントのジャケットやＰＶを手がける事ができた。
俺が描いたあるバンドのジャケットが、各界で絶賛された時、真っ先にTＫさんに"あなたのおかげだ"とお礼を言った。

「俺の力じゃないよ。ブンちゃんの力さ」
と、笑って言った。

こんな度量の大きな男になりたいと、密かにあこがれていた。


彼の失脚は突然おとずれた。あるイベントの興行的な失敗を皮切りに、ドラッグ売買の疑いもかけられて、拘留された。

俺はTＫさんのために金を使おうと思った。

だけど、断られた。

「いいんだ。ブンちゃんを巻き込めない。そうだ。この黒牌を預かってくれないか？何年かかっても、またクラブシーンにもどってくるから、その時この黒牌でまた麻雀で勝負しよう。」

こう言って、消息をたった。

TＫさんは今はどうしてるのかわからない。
風の噂では長野でクラブをやっているという話も聞くけど実際はわからない。どうしてるのかな。生きているといいな。

あのブラックライトとスモークの立ち込める煌びやかな空間を
もう一度、TＫさんと作るならば、いいよ。俺はもう一度自分を全部使ってもいい。

うちのカオス部屋にはまだあの黒牌があるんだよ。ずっとTＫさんが戻ってくるのを待っているんだよ