大学時代、古本屋巡りが趣味の一つであった私は、講義と講義の合間や帰り道に、大学近くにある数件の古本屋によく入り浸っていました。ほとんど毎日顔を出していたので、棚のどこにどんな本が置かれているかまで覚えていて、新しい本が入ったり、置いてあった本が売れて抜かれていると、すぐにわかるくらいでした。でも、それだけ通い続けていたにもかかわらず、その古本屋のおやじさんたちとはほとんど会話を交わしたことはなく、せいぜい 「すいません、○○の本ありますか?」「あー、その本ね。それはないなー」 って感じで、短く言葉を交わすぐらいでした。
自分は将来何になろうかな ~ などと仕事について模索していた頃は、「古本屋さんって、本当に不思議な商売だな ~ 」 なんて、よく思っていました。お店の奥で、買い取ったと思しき積み上げられた本の陰に隠れて座り込んだまま、お客が来ても無反応。たまに動き出したかと思うと、売れて隙間のできたところに本を差し込むなり、またお店の奥に戻って椅子に座り込む。まぁ、無駄のない動きと言えば それまでなのですが・・・。
そんな古本屋さんも、 いまはネットの中に開店しているところもあって、 ここにご紹介する著者の北尾トロさんも、その一人です。北尾さんはフリーのライターとして執筆する傍ら、杉並北尾堂というネット古書店の店主でもあるのです。
この本は、北尾さんがネット上に古本屋さんを立ち上げるまでのアレコレや、開店してからの様々なエピソードを、実に楽しく紹介しています。本書は、前回紹介した 「コーヒーに憑かれた男たち」 と一緒に買ったのですが、混んだ通勤電車の中でも、ほのぼのとした気分を味わいながら読むことができました。面白かったです。 「へぇ ~ 、世の中にはこんな商売もあるんだー」 なんて思いながら、今週末にでも読んでみてはいかがですか。