昨日は仕事の後、 久しぶりに (とは言っても、 まだ修了して3ヶ月しか経っていないのですが) 大学院時代の友人と再会し、とても楽しい時間を過ごすことができました。
私が編集者との2足の草鞋を履いていた大学院での2年間で学びたかったことの一つは、ワンソース・マルチユースの考え方や手法でした。 また、当時はiPadなるものが登場するとは思ってもいませんでしたが、それ以前から電子書籍端末がいくつか出てきていたことで、自分なりにこうした分野への関心が高まっていたことや、本とICT (Information and Communication Technology) をうまく融合できないかなぁという漠然とした思いもありました。
これまで多くの出版社は、 印刷用に組版した最終データ (ワンソース) を、 紙の本へのアウトプットだけに用いてきました。 でもこれからは紙の本だけではなく、それを例えば電子書籍を刊行するためにも利用するという、マルチユースの考え方がとても大切な時代になったと思います。
iPadやKindleなどの電子書籍端末の登場によって、電子書籍が急速に広まってくることは間違いないと思いますし、紙の本は作らず、最初から電子書籍として刊行するということも当然のように広まってくると思います。 でも、こうした時代になったことを、自分たち編集者 (出版社) はピンチになったと捉えるのではなく、アイディアと工夫次第で何か新しいことができる可能性を秘めた時代が来たと考えるべきではないかと思っています。
例えばワンソース・マルチユースの考え方では、上とは逆の発想で、最初に電子書籍として刊行し、その動向や読者の評価次第では、その組版データを紙の本へのアウトプットに展開するということも、自然な流れの一つです。 確かに、電子書籍があるのに (それよりも高い定価設定になるであろう) 紙の本を買う人がいるかどうかということはありますが、この点については相乗効果で成功した例も出てきています。(もちろん、今後もすべてうまくいくというほど単純ではないと思っています。)
また、ICTを活用して、同じ本 (電子書籍) を購入した人たち(読者)を端末を介してネットワーク化し、そこに作られた新しいコミュニティの中で (例えば、その本の内容をKeyとする) 別のストーリーを展開する、ということも考えられます。
こうしたことは一つの例に過ぎないのですが、 これまでの “凝り固まった” 自分に 「ワンソース・マルチユース」 というメガネを一つ掛けてみるだけでも、何か新しい可能性を生み出す小さな種が見えてくるのではないかと思っています。