カテゴリ:音楽
インスブルック古楽音楽祭、2日目は、芸術監督ルネ・ヤーコプスの指揮による「ドン・ジョヴァンニ」。例年はバロック・オペラなのだが、今年はモーツアルトイヤーとあり、初めてモーツァルトを取り上げたのである。
今回は、こことザルツブルクで「ドン・ジョヴァンニ」を聞き比べるというのが、ツアーの最大のハイライトだった。 いやすばらしかった!今年見たオペラのなかでベスト3に入るかもしれない。 まずは上演のコンセプトがすごい。これは出発前まで見逃していたのだが、今回は何と、プラハ初演版とウィーン初演版を両方とりあげるという試みだったのだ。4回の公演のうち、プラハ版とウイーン版がそれぞれ2回ずつ。通常上演されているのは、いいとこどりの混合版である。 私たちはウィーン版を観たのだが、通常版でははぶかれている第2幕のレポレロとツェルリーナの二重唱が見られたのがまず収穫だった。これはドン・ジョヴァンニに変装したレポレロが、変装がばれてツェルリーナにとっちめられるシーンで、通常はここでレポレロが歌うアリアがなく、代わりにコメディア・デラルテの伝統にしたがったというコミカルな二重唱がおかれている。ツェルリーナがレポレロをいすに縛り付けるユーモラスな演出(ブッサール)もしゃれていて、楽しませてもらった。 ほかにも新機軸はいろいろあった。たとえば歌手の選択だが(おそらくヤーコプスによるもの)、ドン・ジョヴァンニ役には若い、26歳のヨハネス・ヴァイサーを起用。それにはちゃんとした理由があり、ドン・ジョヴァンニ役は、台本には「若い騎士」と指定されているが、モーツァルトのオペラで、台本に「若い」と指定されてい役はこれしかないそうで、プラハ初演のときの歌手も21歳だった、だから若くなくてはという考えに基づいているそう。 さらに従者のレポレロは、現実を省みないドン・ジョヴァンニを現実に引き戻す役だから、父親のような年齢の歌手がふさわしいということで、マルコス・フィンクが起用されていた。 あとの歌手も適材適所というじ感じで、全体的にとてもバランスのとれたいい公演だった。(詳しい内容はHPの「コンサート日記 番外編!夏の音楽祭めぐり」をご覧ください)。歌手も器楽奏者も即興のしまくりで(ヤーコプスいわく、「当時は毎回即興をしていたのだから、ひとつとして内容の同じ公演はなかった」)、また第2幕のドン・ジョヴァンニの「セレナード」では、ふつうオーケストラの中で演奏されるマンドリンが舞台に登場、めちゃうまな演奏を聴かせてくれた。780席の会場は超満員で、平土間にも臨時の立ち見客がひしめいていた。通奏低音にハンマークラヴィーアを使ったのも大正解。 ところで、以前にも書いた「ドンナ・アンナのなぞ」だが、今回の演出のブッサールによると、「当時、両親を亡くせば21、2年喪に服するのは当然」なんだそうだ。今はアンナがジョヴァンニのとりこみたいな演出が多いが、私は本当はそのような考えのほうがすっきりするのだけれど。。。。第一、落ち着いて観られるよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
August 28, 2006 12:52:56 PM
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