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ザルツブルク滞在も今日で終わり。明日から2日間フリーになるので、取材をかねてインスブルックに戻ることにした。モーツァルトの初期オペラ「牧人の王」と、アンブラス城でバロック・ヴァイオリンのハジェットを聴く予定である。
それにしても5日連続でザルツのオペラはややグロッキー。もう当分いいかも・・・という気分である。やはり「社交界」に出て行く身支度(といってもたいしたことはしないが)と緊張感は、あまり得意ではないので。そういうのが好きでたまらないひとは大勢いるだろうけれど。・・・ その点、インスブルックは「地元の顔」が見えてよかった。きれいにしているひともいたけれど、ジーンズのひともいて、「ドン・ジョヴァンニ」なんか平土間に立ち見が出る(本当なら立ち見なんかないところ)大入り満員で、そこでは学生さんみたいなひとがリュックをしょっていたりした。やっぱり音楽はこういうほうが血が通っていて楽しい。 ところでザルツブルクの休日、なつかしいひとに会うことができた。 10ウン年前、留学しているときにお世話になった、父と同じ年配のある男性である。 かつて指揮者をめざし、カラヤンのアシスタントをしていたというその老紳士は、カラヤン時代にザルツブルク音楽祭の書記局長をしていた。日本で開かれたある作曲家の展示会を手伝いに来日した折、私がその展示会を下働きをしていた縁で知り合った。下働きといっても、彼らの観光につきあっていたくらいだったけれど。 その後私は縁があってインスブルックに留学し、ザルツブルク在住の彼のところにたびたび遊びに行き、それこそ音楽祭のゲネプロに入れてもらったりして、とても世話になったのである。 今回はザルツブルクで自由な日があるから、連絡を取ろうと古いアドレス帳を持ってきたのだが、いやはや、何度見直しても彼の電話番号がないではないか。 幸い住所は、泊めてもらっていたせいで記憶があった。劇場からそう遠くないところである。そこで一念発起、2日ほど前に空き時間を見てぶっつけで訪ねて行ったのである。留守ならメモを投げこんでこよう思ったのだった。 ラッキーなことに、彼は自宅にいた。夢ではないかと言ってくれ、今日の再会を約束したのだった。 彼の家を訪ねたのはお茶の時間。何もかも10数年前そのままで、今年83歳になったという彼も、髪がいささか白くなったくらいに思えた。 10数年前にあった時から年金生活には入っていたけれど精力的で、今も編曲をしたり作曲をしたり、頼まれた原稿を書いたりしているという。 言葉も頭脳もぴんぴんしているのは、やはり使っているせいだろうか。 彼の素敵なところは、その上に社交的で、とてもジェントルマンだというところだ。あーこういうひとが若くて独身だったら最高!だと思ったものね。 音楽をやっているひとは若々しいひとが多い。奥様の手作りケーキをご馳走になりながら、お金にならない編曲や作曲でも、それをこなし、そして編曲をした作品を仲間内で演奏して楽しむというのも、音楽人ならではの「生涯現役」だと思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
September 6, 2006 01:56:23 PM
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