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カテゴリ:茶木の音楽紀行
新生活の最初の朝を目覚めた。
僕の部屋は古い木造のアパートの三階に有り、そこは最上階で道路側の壁が斜めにな っていて、そこに付いている窓からは空しか見えなかった。 なんだか日本ではお目にかかれないような感じの部屋で、僕はとても気に入った。 壁などはきれいに塗り直してあったが相当古い建物で階段を歩くとぎしぎしと音がし た。 通りに出るとそこは狭い石畳の道に路面電車の線路があり、向かいにパン屋があった ので入って行き、ブロートヒェンを二つ買い、隣のスーパーでチーズ屋のショーケー スの前に立った。 ものすごく多くの種類のチーズの塊が置いて有り、何を注文すればいいか途方に暮れ たが、隣にいたおばさんが「ガウダーケーゼ」と言っていたので僕も同じように言っ てみた。 店のおばさんに何か質問されたが、さっぱり分からない、たぶん「幾つ?」と尋ねら れているのだと想像して二本指を出した。 おばさんはナイフのような金具で一つのチーズの塊を器用に片手で二枚削って紙に包 んで僕に手渡した、ゴーダーチーズだった。 後「ザフト」と書かれたジュースの瓶を買った。 「ザフト」と書かれた物はすべて100パーセントのジュースなのだ。 それだけの買い物を済ませただけで緊張してなんだか疲れてしまった。 どれも日本では食べた事のない美味しさでブロートヒェン[バケットを丸く焼いた物 ]はまだ温かかく香ばしかった。 今日は何をせねばならぬか?そう、まず郵便局に行き口座を開かなくてはならない、 考えただけでも頭が痛かった。 「口座を開きたい」と言う文章だけを何度も練習して、重い足取りで郵便局に行き列 に並んだ。 僕の番が来て女性の局員の前に立った。 やっぱり部厚いガラスがありその下にスライド式の皿があった。 練習したようにドイツ語で言ってみた。 すぐに彼女は何か質問して来たがさっぱり分からない、僕は「分からない」と言った 。 彼女は眉を顰めもう一度同じ事を質問した。 やっぱり分からず黙っていると彼女は「まずドイツ語を勉強してから来てよ!」と大 声で怒鳴ってバン!とカウンターを叩いた。 僕はすごすごと退散した。 こちらでは外国人だからと言う考慮などは全くない、話せて当然なのだ。 ヨーロッパ大陸は陸続きでいろんな国の人たちが行き来し住んでいる。 どうする事も出来ず、部屋に戻り直子さんに電話を掛けて相談してみた。 「それはたぶん何処の郵便局でもお金を降ろせるようにするか、それともその郵便局 だけにするかと尋ねられているんじゃないかな?」と直子さんは言い、その答えを教 えてくれ、ぼくはまたその文章を何度も練習して再び郵便局へと挑んだ。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.12.26 07:13:55
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